【講談社大賞受賞作品】私を殺したのは、大魔法使い様ですか?

花澄そう

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私、死にたくない……

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小さい頃のディオンを知りたい。学園では悪ガキかガキ大将的な存在だったに違いない。

でも学園に入る前はどうだったんだろう?
ディオンがこんなにも綺麗なんだから、きっと両親もとっても美形で……


「学園に入る前は分からねぇ。記憶がねぇから」

その言葉に目を向けると、いつもよりもかすかに眉が下がっているディオンの横顔があった。


その瞬間、思った。
これは聞いてはいけない内容だったのかもしれないと。

「俺が学園に入れられたのは1歳になった頃だったらしいし」
1歳という言葉に、一瞬聞き間違いかと思った。
でもよくよく考えると、これが普通なんだと思った。
だって、ディオンは大魔法使いなんだから。

大魔法使いになる人達はみな、一般的に魔法を感知できるようになる3~5歳以外の年で、魔力が爆発的に増えてしまうらしいから。


「1歳になった頃、俺は魔力の覚醒をしたらしい。で、俺のせいで1つの町が吹っ飛んだと少し大きくなってから聞かされた」

その時、脳裏に入園時に聞かされた言葉が浮かんで来た。

『最悪の場合は、バーン!って1つの町が吹き飛んだりする。そうなったら物心つく前に大量殺人鬼呼ばわれして酷い人生を歩む事になるらしい』

まさか、あれって……

ディオンの事だったの!?


「学園生活っていうと……そうだな……、されたり、塔に入れられたりしたっけな……」
やっぱり!


「なんで塔になんかに……」
「塔は……同級生に怪我ケガさせたんだよ。魔法で」

この学園は、故意こいに生徒や講師等に魔法で怪我をさせると塔に入れられる。

時々だけど、10代くらいまでのヤンチャな男子生徒がそういう理由で塔に入れられる事がある。
そして学園に返ってくると、もれなくどこかの英雄えいゆうみたいな感じで男子生徒たちにあがめられる。そんな様子は目も当てられなかった。

でもディオンの性格上、ああいう人達とは入れられた理由が違う気がする。

何で怪我をさせたのかとかは気になるけど、それより気になるのは殺人鬼呼ばわりの方だ。


「なんで、……どうして殺人鬼って呼ばれていたの?」
最初の頃は、ディオンの事を大量殺人でもした事があるようなサイコパス人間だと思っていた。
けど、一緒にいれば居る程に、それは間違いだと思った。

ディオンは、言葉使いも悪いし短気な所もあるけど、本当は優しい心を持つ人間だ。
だから殺人なんて犯すような人間じゃないと、今は思うんだけど……


「魔力の覚醒で町を吹っ飛ばしてた時、結構殺してしまったらしい。だから」
「えっ?それって……ディオンの意志なんて無いじゃん!」
「ねぇな」
「じゃあ、なんで……そんな事言うのよ!絶対おかしいよ!」
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