【講談社大賞受賞作品】私を殺したのは、大魔法使い様ですか?

花澄そう

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私、死にたくない……

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再び来てしまったその質問に「……えっ!?」と、慌てて後ずさって後頭部を壁に打ち付けてしまう。

ゴンというにぶい音が部屋から消えた時、再びあきれた顔を向けられ、なんとも恥ずかしい気持ちになった。

「何してんだよ」
「はは……」

落ち着きのあるディオンとは違い、ひどく動揺している私は、後頭部に手を当てて笑って誤魔化ごまかそうと頭を巡らす。
でも、この真っすぐな目を向けてくるディオンは、どうやっても誤魔化せない気がして視線を落とした。


「えっと……」

言葉が詰まる。

「私が、ディ⋯⋯ディオンのことが、好きかって話だよね?」
「ああ」
「わ⋯⋯私は、ディオンのこと⋯⋯」

横からの視線が痛い。


「す⋯⋯好⋯⋯」

あぁ⋯⋯。こんなの本心じゃないのに。

「好きじゃ……ない……」

でも、仕方ないから。
今の私に、本心なんて言えるわけがないから⋯⋯

ディオンと一緒に居てる時、自分の気持ちを言いたくなる事は何度かあった。
でも、そのたびにメイの顔が浮かんで来て……言えなかった。

罪悪感と後ろめたさ。

メイの事を考えると、結果はどうであれ、気持ちを伝えるのはまるで抜け駆けのように思うから。



それに、ディオンの態度が変わってしまうんじゃないかという不安もある。

私の気持ちを知ってしまったら、避けられ続けている女生徒達と同じ道を歩んでしまうんじゃないかと思ってしまう。それも怖い。

それなら、今の関係の方が絶対いいに決まってるから……


「んだよ。違うのかよ」
どこか残念そうなディオンの言葉に、不思議な気持ちになる。

「どんな風に生きて来た……か」
つぶやくディオンは、ダルそうに後頭部で手を組んで天井を見上げた。

「……別に聞いて楽しい話なんてねぇけどな。最低限働いて、残りは自由に暮らしてるだけだ」
その言葉に、キョトンとした顔を向けてしまう。
なぜなら、その話の感じからして、今なら聞いても大丈夫なような感じがしたからだ。

「もしかしてディオンの事、聞いていいの?」
「聞きてぇんだろ」
そう言われて遠慮がちにうなづく。


「面白れぇ事なんてねぇけど、知りてぇ事があんなら聞けばいい」

……良いんだ。ディオンがよく分からない。
前は言いたくなさそうだった気がしたのに。ただの気まぐれ?

気まぐれだったとしても、嫌でないのなら聞きたい。ディオンの事をもっと知りたい。


「じゃあ聞くね」
なんかドキドキする。

「ああ」
「1つ目。学園に入る前や学園に居た頃はどんな感じだったの?」
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