【講談社大賞受賞作品】私を殺したのは、大魔法使い様ですか?

花澄そう

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手紙の謎

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「ずっと縛り付けられていたたましいも全部解放したし、闇魔力も消しといた」
「えっ……。えぇ!?」
そんな事出来るの!?ディオン凄すぎない?本当に何者!?
驚きで。今度は目玉が飛び出そうになる。

「だから、それはもう闇魔法の魔道具じゃない、ただのネックレスだ。だから堂々と付けとけ」

そう言われて初めて、じっと石を見た。
太陽の光で机の上に碧い光の影を作る石は、私の知ってる物と変わりないように見える。

恐る恐る手に取って、ツルっとした石の感覚を確かめる。

指先が覚えている。
このフォルムも、手触りも……。

ふと太陽にかざした。
すると、深い海のようなあお色が浮かび上がって来て、心が洗われていく。

「……っ!」
その時に気が付いた。


「あっ……」
ヒビが綺麗サッパリ無くなっている、という事に。

そっぽ向くディオンに目を戻しては、感謝の気持ちがあふれてくる。


ディオンは分かりにくい。
突然意味不明に怒る事もあるし、手も早いし謎だって多い。

でも、こんな風にさりげない優しさが出来る人だ。
興味なんて無い私の話を、文句を言わずに聞いてくれる人。


「……ディオン」
「ん?」
ダルそうな目だけがこちらを向く。


「ありがとう」
そう言うとまたどこかに遊びに行くディオンの視線。
「んー」

そして、意外と照れ屋な人。

私は、そんなディオンがどうしようもないほどに――――好きだ。



…………

……


「なんで時空間の本ばっか読みあさってんだ?」
本越しに見えたのは、少し横に傾いているドアップのディオンの顔。

ディオンに後光が見える気がするのは、ディオンの事を『好き』だと自覚したせいではなく、ステンドグラスからの明かりのせいだろう。

ディオンは、私が本棚の間にある一人掛けの椅子で集中して本を読んでいる間に、近づいてきていたようだ。
私の読んでいる本の表紙を覗き込むようにしてかがんでいる様子に、私は慌てて本を自分の背後に隠した。

「ひゃ、ひゃぁ!!い、いつの間に!」

実は私は今、魔書資料室に来ている。


この前のランチの後、『まだ魔書資料室に入りてぇか?』と聞かれた。

なんでそんな質問をするんだろうと思って話を聞くと、もうすぐ学園長や講師、警備員までもが不在がちになる日があると教えてくれた。
なんと、その日なら、また魔書資料室に入れてやれると言うのだ。

私がした返事は言うまでもないだろう。
で、その日が今日というわけだ。
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