【講談社大賞受賞作品】私を殺したのは、大魔法使い様ですか?

花澄そう

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手紙の謎

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そして次々と、最近振った人たちの悲し気な顔が浮かんでくる。

「どうしたらいいんだろう……私」
私に好意を抱いてくれているのに……

「傷つけたくないのに……」
あんな、悲しそうな顔なんてさせくない。

「なのに、いつも……傷付けちゃう……」

傷付けない振り方があったらいいのに……


その時、ふと前にディオンに言われた、『俺とお前が付き合ってるって事にした方がお前にとっちゃ楽だと思うけどな』という言葉が浮かんで来た。

あの時は、何をバカな事を言ってるんだろうと思っていたけど……、今ならあの言葉に納得できる。
ディオンは、どんなつもりで言ったのかどうかは分からないけど。

いっそのこと、本当に付き合っているフリをしてもらおうかな……?こっちの世界では、講師と生徒が付き合うのもよくある話だし。
付き合ってるといううわさが回れば、自然と離れて行くかもしれない。


「シエルちゃん……」
そう呼ばれると、心配そうなローレンの顔が映った。


……でも、それって、またみんなを騙すことになるんだよね。
前世の事やネックレスの事もずっと隠しているのに、また隠し事が増えてしまう。そんなの嫌だ。

こんなんだから、メイに絶交されたんだよね……。
駄目だな……

「もう、どうしていいのか……分からない……」


その後、ローレンはチャイムが鳴るまで私の話を優しく聞いてくれていた。
ローレンは、振るのが辛いという私の気持ちに感情移入してしまったのか、今にも泣きそうな顔をしていたのが今でも忘れられない。

…………

……

結局、何度も頑張ったけどメイとは仲直り出来ず、ローレンが学食で言いかけた言葉も聞けないまま、訓練場は元通りになり、雨の時期が訪れ、夏になり、気付けば秋になっていた――

そんなある日の屋上。



私はディオンと昼食を取っていた。

絶品玉子サンドを食べ終わった私は、次にディオンが出してくれた、色とりどりのマカロンの中から1つ手にする。


「今日の授業は何するの?」
ディオンが授業の曜日は、こうやって2人でランチをする。
これはもう毎週の恒例こうれいみたいなものになっている。

メイの気持ちを知りながら、こんな事していていいのかな?って、よく思う。

ずっと、笑顔の裏に罪悪感がある。

なのに私は……それでもディオンと居たいと思ってしまう。
2人で居る、この時間が好きだから……。


でもきっとこれは……
いけない事で、本当に自分よがりで自分勝手な事なんだと思う。


そこまで分かっていても止められない理由は……もう分かっている。
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