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手紙の謎
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しおりを挟む「えっ。す、す、す、好きなんかじゃないし!」
心臓が酷くバクバクする。アランの目なんて絶対見れない。
もっと冷静に返せればいいのに、そうは出来ない自分に戸惑う。
その時、アランが勢いよく立ち上がったから見上げた。
すると、いつも温厚なアランがとても不機嫌な顔つきになっていて、驚いてしまった。
「どう……したの?」
トレーを見ると、まだ食べかけの肉うどんがあるのに。
「教室戻るわ」
アランは低い声でそう言うとトレーを手にして立ち上がった。
「えっ?」
目も合わせずに去って行ったアランに疑問が残る。
あんなアラン、見た事がない。
何か悪い事を言ったっけ?と思い返してみても心当たりなんてなく、眉をひそめた。
その時、「こんにちは。シエルちゃん」という聞きなれた声に再び視線を上げた。
すると椅子を引くローレンが映り込む。
「ここ、いいかな?」
「はい」
いつものように上品に椅子に腰をかけるローレンは、机の上に肘を付くと左右の指先同士をそっと合わせた。
「珍しいね。ジョウガサキと二人でランチなんて」
と言ってくるローレンの笑顔の中に怒りのようなものが見える気がして、目をこすった。
今日の私は疲れてるんだろうか。
「アランは、私が落ち込んでるのを見かねて励ましてくれていたんです……」
なのに、アランはどうしてあんなに不機嫌になってしまったんだろう?
ローレンもなんだか機嫌が悪そうに見えるし……と思って見ていると、今度は眉をひそめられる。
「落ち込んでるって……まさか、この後起こる事を聞いたの?」
ローレンの質問に思い当たる節がなくてキョトンとしてしまう。
「……えっ?この後起こる事?」
首を傾げて聞いた瞬間、ローレンは悩まし気に額にそっと手を当てた。
「違うんだ……」
なんだかとても残念そうだ。
「シエルちゃんはご年配の方と仲良かったよね」
「エルバードの事ですか?」
「そう。同じクラスでしょ」
学園最年長のエルバードはDクラスだから、今は同じクラスになっている。
「はい……。でも、特に変わった事なんて話してないですよ?」
最近、エルバードは元々口数が少ないし、話してもお花の話くらいだ。
と思い返していると、「やっぱり隠し通すなんて出来ない」と言いながらローレンは席を立ち、さっと私の席の隣に移動した。
いつも向かい側だったローレンが隣の席に座るなんて初めての事で驚いていると、ローレンは辺りを警戒するように見回してから眉をひそめた。
「確実な情報じゃないんだけど、遠くない将来、良くない事が起こるかもしれないんだ」
ローレンの声はとても小さくて、一瞬周りの雑音にかき消されるかと思った。
「良くない事?」
「うん。……僕がいるAクラスは年齢層が高いから、回り回ってしまって今では講師に強く口止めされてるんだけど……」
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