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手紙の謎
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しおりを挟む器の中を見ると、いくらや大トロなどがふんだんに載せられた豪華な海鮮丼だった。
そしてアランのトレーを確認すると、もう肉うどんしか乗ってなくてキョトンとしてしまう。
「これは?」
と海鮮丼を指さして聞くと、「シエルちゃん、ここ何日かちゃんと食べてへんかったやろ?やから食べ」と言うから、優しさで胸が熱くなった。
「えっ!いいよ。アラン、絶対それだけだと足りないでしょ」
と言いながら遠慮がちに丼の器を持ち上げようとした手は、アランの手に止められてしまう。
「ええねん、ええねん。どうせ俺もコレでプレミアム食べ放題やから、もし足りんかったらまた注文しに行くし」
アランはDクラスバッチの横にあるプレミアムバッチを、白い歯を出して突いた。
「ありがとう」
なんとなく納得した私は、クロワッサン1つとバターしか乗っていなかった自分のトレーに丼を降ろした。
「で、魔力の調子はどうや?ラブは可愛いし大人しいから預かってるんは全然ええんやけど」
ラブは、私の魔力が安定するまでの間、アランの部屋でみてもらっている。
魔力が不安定な状態でラブの傍にいると、ラブが体調不良になるらしく、そのせいで目が覚めてからずっと会えていない。
前までは、家族同然で毎日寝るときも一緒だったから凄く淋しい。
早く会いたい……
「ずっとラブをみてくれてて本当にありがとう。
魔力は……次ディオンに会ったら診てもらおうと思ってたんだけど、急な休みに入ったから……」
「ああ~せやな。1か月くらい休みになったもんな」
と言うと、アランは耳に付いているシルバーのピアスをツンツンと触ってから顎に手を当てて暫く黙り込んだ。
「そういえばさ、シエルちゃん」
「ん?」
「シエルちゃんにとってあの特別講師はなんなん?」
アランからは、前にも似たような質問を受けた気がする。
あの時はなんとも思わなかったのに、今は……
「え?なんなん……って?」
ただ聞かれただけなのに早まる心臓に、戸惑う。
「カミヅキ講師の事、どう思ってんの?」
「ど、どうって……」
勝手に頬に熱が帯びて、熱を確かめるように頬に手を添える。
特別な異性?
いや、好きな人……?かな?
でも本当に?やっぱりまだ分からないし……。
もし好きだったとしても、アランにそんな事言えないよね。
だって過去に告白されてるし……
でも、ずーっと、アランから好きなんて雰囲気は出てないし何も言われてなから、もう過去の話のような気がするけど……。
「わ……分からない……」
そう言うと、アランの目が大きくなったのが分かった。
「……なんや、分からんて。まさか好きになったんちゃうやろうな?」
そう言われて、一気に変な汗が噴き出そうな程に体温が上がった。
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