【講談社大賞受賞作品】私を殺したのは、大魔法使い様ですか?

花澄そう

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手紙の謎

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そう言われても前世の事や闇魔法の事なんて言えるわけがない私は、悔しさを胸に俯《うつむ》いた。

「そう…………。ここまで言っても、何も言ってくれないんだ……。じゃあ……もう、いいよ……」
メイがゆらりと立ち上がるのが視界の端に映る。
顔を上げると不服そうににらむ目がこちらを向いていた。

ずっと親友をやってきて、こんな目を向けられたことなんて一度も無くて、心の中が波立つのが分かった。

「シエルなんて親友じゃない!もう絶交するからっ!!」
部屋中にひびくように叫んだメイは、すぐにきびすを返して私の部屋から出て行った。

悲し気に涙を流すメイを引き留めたかったのに、引き留めるすべを持たなかった私は、一人になった部屋で再び床に視線を落とした。


…………

……


ザワつく学食の端で一人ランチをしようと席に座ると、向かい側の席にトレーが置かれて目を向けた。
すると、アランが椅子を引いている様子が映った。

「どーしたんや、一人なんて珍しいやん。メイちゃんとケンカ中か?」


向かい側の椅子に座るアランに小さく返事をする。
「……うん」

「やっぱそうか。ここ2,3日様子がおかしいなって思ってたんやけど……」
と言われて机に視線が落ちる。

「大丈夫やシエルちゃんとメイちゃんなら仲直り出来る。友達はケンカをして仲良くなっていくんやで。だから今、もっと仲良くなろうとしてる所なんや」

「ケンカをして仲良くなる……?」
「そうやで。俺が1番仲いいやつなんて何度ケンカしたか分からん位や。でも腹を割って話すから、なんだかんだ言ってそいつが一番仲よかった」

そう言われて前世を思い返すと、その話に思い当たる節がいくつか思い出された。

今世では言い合いやケンカなんて、1度もした事が無かった。
転生者という事もあって、クラスメイトは実際はうんと年下ばかりだったから、理不尽りふじんな事があっても本気になることは無くて、一歩引いていたからだろう。

でも、知らない間に精神年齢が追い付かれていたのかもしれない。いや、もう追い越されてるのかも……


「大事なのはタイミングや。よく目を見て、しっかり話し合えばええ。ちゃんと相手の事が好きなんやったらそれだけで仲直り出来るはずや」

「……うん……」

普通はそうなのかもしれない。

でも今回みたいに、ケンカの元となった原因を解決出来ない場合は……仲直りの未来なんて見えない気がする。

「何しんみりしてんねん。大丈夫やって!」
うつむく私の肩を、はげますようにポンポンと叩いてくるアラン。

前世の事やネックレスの事は、やっぱり言えない。
でも、ずっと悲しい思いをさせていた事は……謝りたい。
そんなんじゃ駄目なのかな?

「1回頑張ってみ。で、アカンかったらなんぼでも相談に乗るから言い」

どうしていいのかは分からないけど、こう言ってくれる人がそばにいるだけで、本当に頑張れそうな気がする。

「うん。ありがとうアラン」

さっきよりも覇気はきのある声で返事をすると「ん」と言って、私のトレーの上に器を乗せて来た。
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