【講談社大賞受賞作品】私を殺したのは、大魔法使い様ですか?

花澄そう

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手紙の謎

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困惑の目が向いて、一瞬で体が沸騰しそうになる。
だから、思わず叫んで否定をした。
「ち、違う!」

「シエル、いつになく必死だよ?好きなら好きだって言ってくれたら、私……」
「ディオンなんて好きなわけないじゃない!私は、誰とも恋愛なんてしないって前から言ってるじゃん!」
「何それ。なんでいつもそんなにかたくななの?シエルにとって恋愛は悪なわけ?したきゃしたらいいじゃない!」
「したくなんて無いし!」
「今までは本当にそうだったかもしれない。けど、今のシエルはそうは見えないよ」
そう言われて胸がギクりとした。


「別に……本当に私、ディオンの事なんか……」
私の口から弱々しい声が出る。

私に嘘をつくの?」
「えっ……」
「それにさ、恋愛なんてものじゃなくて、ものでしょ!?」
「落ちる……?」
「そうよ!好きになろうと思って好きになるんじゃなくて、気付いたら好きになっているものでしょ!?」


気付いたら……好きに……?


そう言われてジワッと浮かび上がって来たのは、ディオンのドヤ顔で微笑ほほえむ顔。


その顔を浮かべるだけで胸が焦がれるような、ギューっと心臓が痛くなるような気持ちになるのが分かった。

すぐにそんな映像を首を振って消し去ろうとすると、今度は前にメイが話してくれた会話が頭の中に流れ始めて来た。


『好きっていうのは、この人とずっと一緒に居たい、そばにいたいって思う事かな?って私は思ってる……』
その言葉に、私は頭を抱えた。


嘘っ……

もしかして私はもう……メイが言うように本当に落ちてる……っ!?



いや。そうだったとしても……

私は……


「ここを出たらやりたい事があるの。だから……」
「何それ……やりたい事と恋愛は関係ないでしょ?」
「あるの」
「恋愛したらいけないやりたい事って何よ?そんなのある!?」
と言われてぐっと口をつぐむと、メイは眉を下げて悲し気にため息をついた。

「……やっぱり、答えてくれないのね。そんなのばっかり」
「え?」
「シエル、ずっと私に色々と隠しごとをしてるよね」
そう言われて胸がギクっとなる。

「大浴場に入らない理由だってそう。ずっと見られたくないあざか何かあるのかと思ってたけど、何も無かった……。そうやっていつもシエルは私に隠し事をする」

「……っ」
「私はこんなに何もかも全部話してるのに、どうしてシエルは私に言ってくれないの!?どうしていつも隠し事をするの!?そんなに私が信用できない!?」
悔しさを耐えるように唇を噛んだメイの目じりには、涙が溜まっていて、罪悪感で胸が締め付けられる。


「信用できないとかじゃ、ない……」
怒りと悲しみに揺れるメイに、今すぐにでも何かをしてあげたいと思う。
なのに、どうしていいのか分からない。

「じゃあ言ってよ!私たち親友でしょ!?何を隠してるの!?」
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