【講談社大賞受賞作品】私を殺したのは、大魔法使い様ですか？

手紙の謎

8

それもそのはず。
そんなセリフ、過去にメイの口から何度聞いたか分からないからだ。

だから内心焦る気持ちを誤魔化して、茶化すように言った。
「ま⋯⋯また？メイいつもそんなんじゃん」
「違うし！今回は本気だし！」
「はいはい。もうそういうの聞き飽き……」
話している最中、メイの真剣な瞳が入って来て一瞬固まってしまった。

「……えっ…………嘘だよね？」

「嘘なんかじゃない！シエルの意識が戻らなかった間、シエルの部屋でカミヅキ講師と会う事が多くて、会えば会う程に好きになっていったの！今回は本気なの！」
そう言って口元に手の甲を当てるメイは頬を染めている。

その姿を見た瞬間、居ても立っても居られなくなった私は、ベットから勢いよく立ち上がった。

「だっ、駄目だめだよ！」
「……何が駄目なの？」
「そ……それは……」


「メイには、もっといい人がいると……思うし」
本当はそんな理由じゃない。

メイがディオンを本気で好きだなんてすっごく嫌なのに、何がこんなに嫌なのか、自分でも分からない。

「私はカミヅキ講師がいいの！」
間髪入れずに返って来たメイの言葉に、胸が焼けそうになって胸元を強く掴んだ。


無理。
ディオンだけは止めて欲しい……。

……どうして？


私は、ディオンの事を意識している。それはもう認める。


展望台の時や、この前の誕生日祝いの時も……、思い返せば私はディオンの事を、ただの普通の異性として見てないと思う。


でも、そこまでのはず。
それ以上はないはず。

なのに、どうしてこんなに……

「でも……」

「なんで止めるわけ？好きな人が出来た時、いつも応援してくれてたじゃん」
と言うと、メイは何かに気付いたような顔をして続けた。

「まさかっ……。シエル……カミヅキ講師の事……」