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手紙の謎
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しおりを挟む『面白い事?』
『そうよ。これとこれで秘密のお手紙を書いて、パパをビックリさせよう』
そう言うお母さんの手には、ミカンと紙があった。
えっ!?
まさか……っ!!
「どこ行くんですか、タチバナさん!」
いきなり立ち上がってこの場を離れようとする私に、Dクラスの講師が驚いたように聞いてくる。
「ほ、保健室に!」
手紙が毎回柑橘系の匂いがしてたのって、もしかして……
『ほら、じわぁーっと絵が出てくるでしょ?面白いでしょ』
『うん!面白い!』
『シエル、これはね……』
肩で息をする私は自分の部屋の鍵を開け、勢いよくドアを開ける。
そして、手紙を片付けている机の引き出しを開けた。
『あぶり出しって言うのよ』
…………
……
「シエル。大丈夫?」
「え?」
学食でパスタを食べるメイの眉が寄る。
「今日ずっとボーっとしてるよ?久しぶりの授業で疲れた?」
「そう、かも……」
本当は見学ばかりで疲れていない。
ただ、あの手紙の事を考えていただけだ。
「お昼食べたら早退させてもらった方がいいんじゃない?」
「……うん。そうだね。そうしようかな……」
まだまだ手紙について色々調べたいし。
と思った瞬間、聞き取れないほどの猛烈な爆発音が鼓膜に飛び込んできて、学食内が酷く揺れた。
でも、そんな爆音も揺れも一瞬で収まって、みな慌てた様子で学食の外に出ようと出口に向かった。
なのに、なぜか皆が中に引き返してくる。
先頭あたりの人たちが何か言ってるけど、学食内が煩過ぎて全く聞き取れない。
私もメイも同じく建物から出ようとしたが、今は前にも後ろにも行けず、すし詰め状態だ。
「何、何?なんで建物から出ないで戻ってくるの?」
絶対答えられない質問を、隣のメイは投げかけてくる。
「……分からない」
一体何が起きているのか、この場にいる人たち全員が分かっていないようだった。
すると、先頭あたりから「風が止んだぞ!」と言う声が聞こえた。
風?と思っていると、今度は押されてなだれ込むように学食の建物の外に出されてしまった。
まるで都内の満員電車から降ろされる時のようだ。
圧迫から解放されて、こけてしまった私の後ろ側から、不安そうな声が落ちて来る。
「な……なんだ、あれ」
「……え?何、あれ……」
振り返ると、目を見開いてどこかを見ている男子生徒や、口元を覆って驚く様子の女子生徒たちがいた。
周囲を見ると、学食の外に出た人たちは皆、同じ方向を見ていて、驚愕の表情を浮かべていた。
恐怖を抱きながら、その方向に勢いよく振り返ると――
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