208 / 395
手紙の謎
3
しおりを挟む
平均年齢7~9歳のFクラスと違って、Dクラスは年齢層バラバラだけど10代が多い。だからその分、色恋も多いのかもしれない。
アランがあまりにも普通に接して来るから、つい忘れがちになるけど、アランはまだ、私の事を想ってたりするんだろうか?
『俺……こんな気持ち初めてなんや。まだ出会ったばっかやけど、シエルちゃんが好きや。俺と付き合ってほしい』
って出会ったばかりの頃に言われたけど……
その時の台詞を思い出して恥ずかしくなっていると、アランとハイタッチを終えた女子達が、私に睨みを利かせてくる。
ああ。私、このクラスで上手くやってけるのかな……。不安しかない。
その時、心を落ち着かそうと、服越しにネックレスの石を触ろうとした。
でもスカスカと服の布を掴んだだけで、何も掴めない。
不思議な気持ちになった私は、すぐにこの前の出来事を思い出す。
……あっ。そうだった。今無かったんだった。
つい、いつもの癖で……
…………
……
半身だけ夕日に染まるディオンは、ネックレスを手にして言った。
『これは俺が持ってるから』
『どうして?』
『分かるだろ。これに魔力制御する闇魔法がかけられてんだぞ』
『そう……だよね……』
取り上げるには十分すぎる理由だけど、頭では納得しようとしてもできない。
『それに……今のお前は、これが無い方がいいんじゃねぇか?』
と私の心を見透かすような目が向く。
ネックレスに関して、戸惑いがあった私は、その言葉に何も返せなかった。
…………
……
ずっとここにあったネックレス。
無いと凄く淋しい。
でも、あったらあったで悲しかったはず……。
最初っからあのネックレスを付けて無かったら、今頃わたしは卒業間近とかだったんだろうかとか?そんなたらればを、何度も考えてしまう。
こんな事なら、言いつけなんて守らずに、早いうちに外しておけばよかった。
そしたら、早くあのネックレスの効力に気付けていたのに。
でも……、そんな事したら両親が捕まる可能性があったのかもしれない。
だって、あのネックレスは禁忌魔法で作った闇魔法の魔道具なんだから。
それに意外な事に、本当の私の魔力はかなり多いようで、ディオンでも魔力の暴走を完全に抑えきれなかったそうだ。
そう考えると、ディオンの居ない時にネックレスを外していたら、暴走で死んでいた可能性もあるのかもしれない。
そんな事を考えていると、魔法訓練場の大きなドアが開いて学園の雑務係の制服を着た人が入って来た。
その瞬間、強い風が一気に吹き込む。
雑務係の人はめくり上がりそうなスカートを片手で押さえ、もう片手で大事そうに紙の束を持っている。
しかし、突風が彼女の持つ紙を天井に向かって舞い上がらせた。
「ああー!」
と雑務係が叫び、紙が散乱する中、数枚がクラスイトの出した火の玉に当たった。
その一枚の紙が風に乗って私の足元に落ちる。
さすが、大型台風が接近中なだけあるな、と思いながら、真っ黒焦げではないが、ほんのり茶色っぽく焦げた紙をそっと持ち上げる。
その時、ふと目に入って来たその焦げた跡が、何かの模様に見えるような気がした。
過去にこんな光景をどこかで見た気がして、勝手に過去の記憶の中からあら捜しを始める。
すると、「ありがとうございます」という声が聞こえて紙から視線を上げた。
目の前には手を差し出す雑務係がいる。
「あーあ、焦げちゃいましたね」
「……そうですね」
なんだっけ。
せっかく今、一瞬思い出しかけたのに、と思ってプリントを差し出すと――
『シエル。面白い事をしてあげる』
アランがあまりにも普通に接して来るから、つい忘れがちになるけど、アランはまだ、私の事を想ってたりするんだろうか?
『俺……こんな気持ち初めてなんや。まだ出会ったばっかやけど、シエルちゃんが好きや。俺と付き合ってほしい』
って出会ったばかりの頃に言われたけど……
その時の台詞を思い出して恥ずかしくなっていると、アランとハイタッチを終えた女子達が、私に睨みを利かせてくる。
ああ。私、このクラスで上手くやってけるのかな……。不安しかない。
その時、心を落ち着かそうと、服越しにネックレスの石を触ろうとした。
でもスカスカと服の布を掴んだだけで、何も掴めない。
不思議な気持ちになった私は、すぐにこの前の出来事を思い出す。
……あっ。そうだった。今無かったんだった。
つい、いつもの癖で……
…………
……
半身だけ夕日に染まるディオンは、ネックレスを手にして言った。
『これは俺が持ってるから』
『どうして?』
『分かるだろ。これに魔力制御する闇魔法がかけられてんだぞ』
『そう……だよね……』
取り上げるには十分すぎる理由だけど、頭では納得しようとしてもできない。
『それに……今のお前は、これが無い方がいいんじゃねぇか?』
と私の心を見透かすような目が向く。
ネックレスに関して、戸惑いがあった私は、その言葉に何も返せなかった。
…………
……
ずっとここにあったネックレス。
無いと凄く淋しい。
でも、あったらあったで悲しかったはず……。
最初っからあのネックレスを付けて無かったら、今頃わたしは卒業間近とかだったんだろうかとか?そんなたらればを、何度も考えてしまう。
こんな事なら、言いつけなんて守らずに、早いうちに外しておけばよかった。
そしたら、早くあのネックレスの効力に気付けていたのに。
でも……、そんな事したら両親が捕まる可能性があったのかもしれない。
だって、あのネックレスは禁忌魔法で作った闇魔法の魔道具なんだから。
それに意外な事に、本当の私の魔力はかなり多いようで、ディオンでも魔力の暴走を完全に抑えきれなかったそうだ。
そう考えると、ディオンの居ない時にネックレスを外していたら、暴走で死んでいた可能性もあるのかもしれない。
そんな事を考えていると、魔法訓練場の大きなドアが開いて学園の雑務係の制服を着た人が入って来た。
その瞬間、強い風が一気に吹き込む。
雑務係の人はめくり上がりそうなスカートを片手で押さえ、もう片手で大事そうに紙の束を持っている。
しかし、突風が彼女の持つ紙を天井に向かって舞い上がらせた。
「ああー!」
と雑務係が叫び、紙が散乱する中、数枚がクラスイトの出した火の玉に当たった。
その一枚の紙が風に乗って私の足元に落ちる。
さすが、大型台風が接近中なだけあるな、と思いながら、真っ黒焦げではないが、ほんのり茶色っぽく焦げた紙をそっと持ち上げる。
その時、ふと目に入って来たその焦げた跡が、何かの模様に見えるような気がした。
過去にこんな光景をどこかで見た気がして、勝手に過去の記憶の中からあら捜しを始める。
すると、「ありがとうございます」という声が聞こえて紙から視線を上げた。
目の前には手を差し出す雑務係がいる。
「あーあ、焦げちゃいましたね」
「……そうですね」
なんだっけ。
せっかく今、一瞬思い出しかけたのに、と思ってプリントを差し出すと――
『シエル。面白い事をしてあげる』
0
お気に入りに追加
52
あなたにおすすめの小説

【完結】貧乏令嬢の野草による領地改革
うみの渚
ファンタジー
八歳の時に木から落ちて頭を打った衝撃で、前世の記憶が蘇った主人公。
優しい家族に恵まれたが、家はとても貧乏だった。
家族のためにと、前世の記憶を頼りに寂れた領地を皆に支えられて徐々に発展させていく。
主人公は、魔法・知識チートは持っていません。
加筆修正しました。
お手に取って頂けたら嬉しいです。
【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。
氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。
私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。
「でも、白い結婚だったのよね……」
奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。
全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。
一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。
断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

没落した建築系お嬢様の優雅なスローライフ~地方でモフモフと楽しい仲間とのんびり楽しく生きます~
土偶の友
ファンタジー
優雅な貴族令嬢を目指していたクレア・フィレイア。
しかし、15歳の誕生日を前に両親から没落を宣言されてしまう。
そのショックで日本の知識を思いだし、ブラック企業で働いていた記憶からスローライフをしたいと気付いた。
両親に勧められた場所に逃げ、そこで楽しいモフモフの仲間と家を建てる。
女の子たちと出会い仲良くなって一緒に住む、のんびり緩い異世界生活。
愛されない皇妃~最強の母になります!~
椿蛍
ファンタジー
愛されない皇妃『ユリアナ』
やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。
夫も子どもも――そして、皇妃の地位。
最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。
けれど、そこからが問題だ。
皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。
そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど……
皇帝一家を倒した大魔女。
大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!?
※表紙は作成者様からお借りしてます。
※他サイト様に掲載しております。

完)嫁いだつもりでしたがメイドに間違われています
オリハルコン陸
恋愛
嫁いだはずなのに、格好のせいか本気でメイドと勘違いされた貧乏令嬢。そのままうっかりメイドとして馴染んで、その生活を楽しみ始めてしまいます。
◇◇◇◇◇◇◇
「オマケのようでオマケじゃない〜」では、本編の小話や後日談というかたちでまだ語られてない部分を補完しています。
14回恋愛大賞奨励賞受賞しました!
これも読んでくださったり投票してくださった皆様のおかげです。
ありがとうございました!
ざっくりと見直し終わりました。完璧じゃないけど、とりあえずこれで。
この後本格的に手直し予定。(多分時間がかかります)
旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます
結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】
ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。

(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅
あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり?
異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました!
完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。

竜王の花嫁は番じゃない。
豆狸
恋愛
「……だから申し上げましたのに。私は貴方の番(つがい)などではないと。私はなんの衝動も感じていないと。私には……愛する婚約者がいるのだと……」
シンシアの瞳に涙はない。もう涸れ果ててしまっているのだ。
──番じゃないと叫んでも聞いてもらえなかった花嫁の話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる