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手紙の謎
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……
目、腫れてないよね?
朝から泣いてしまった私は、瞼の腫れを気にしながら、初めて訪れたD-1と書かれた教室の前で足を止めた。
上級クラスの人数は多く、下級クラスと違って級毎に2,3クラスに分かれている。なのに私はアランと同じクラスだ。
ここから見える顔ぶれは、見たこともない人達。
なんか…… 入りづらい。
「こんなところで、なに突っ立ってんねん」
突然背後から話しかけられ、胸をギクリとさせて振り返ると、すぐ後ろにはアランが立っていた。
「あ、アラン。おはよう」
良く知る顔に、なんだかホッとする。
「おはよう。女子寮ぶりやな」
「だね。……って、そういえばどうだった?女子寮」
「ん?」
「前に、『女子寮は男のロマンや!』みたいな事を言ってたじゃない?」
「ああ、そんな事言ってたっけ……?」
と顎に手を添えるアランは、思い返すように目を閉じたあと、すぐにカッと目を見開いた。
「女子寮は、とにかく、めーーっちゃええ匂いやったわ!」
「えっ?匂い?」
「ほんまに野郎しか居ない場所とは廊下からしても空気が全然違ってん!あの汗くさい、男くさいとは無縁の空気!言うなら花のような香りやったわ!俺も住めるなら女子寮に住みたい位や」
イケメンなのに、そんな事を感慨深げに言ってくるから笑ってしまう。
「何それ。なんか変態っぽい」
「誰が変態や。でも、ほんま特別に許可してくれた管理事務局員に感謝やなぁ。もう一生入れんやろうし。いい思い出にしとくわ」
メイ情報だけど、夢に入る前、ディオンは途中で起きると戻って来れなくなるということで、その場にいた皆を部屋から追い出し、頑丈なシールドまで張ったそうだ。
しばらくしてシールドが消えたと思うと、ドアが開いて顔を出したディオンがこう言った。
『もうすぐシエルが目覚める』と。
その言葉でその場は大騒ぎになったそう。
そして、その情報が音速でアランやローレンの耳に入って、すぐに駆け付けた2人を、特別にフクロウさんの監視付きという条件で女子寮に入れてもらう事になったんだとか。
監視付きならいいの?って思ったけど、いいらしい。
「それにしても前も思ったけど、その髪色と目の色、見慣れへんなぁ」
「だよね。私も」
光るような色の長い髪の毛先を摘まんで苦笑いすると、アランは私の頭上にポンっと手を置いた。
「ま。でも元気そうでホンマ良かったわ。ってか、さっきから見てたんやけど、教室入りにくいんか?」
と言われて頬をポリっとかいて視線を下げた。
「……うん。なんか出遅れた感じがして……」
「まぁ、もうクラス変わって4カ月も経ってるしな。同じクラスやし、俺が皆に紹介したるわ」
「えっ」
グッと肩を抱かれ、驚く私を引き連れてアランは問答無用に教室へと足を踏み入れた。
「アランッ」
「大丈夫や。みんなええ奴やから安心し」
まだ心の準備が出来てない中、アランは大きな声でクラスメイトを呼んだ。
「おーい、皆注目やでー」
…………
……
結局アランに紹介してもらったところ、成長して見た目が変わっていただけで元同級生が多くて安心した。今回は講師も優しそうだし。
でも、数人からは睨まれている気がした。
……気のせいならいいんだけど。きっと気のせいじゃないよね。
「よっしゃ!」
「きゃー!アランカッコイイ~!」
そんな声に顔を上げると、ガッツポーズをするアランの姿が映った。
今は、火の玉を作って的に当てるという小テストを行っている。
実技的なものは暫くお休みと言われてしまっている私は、魔法訓練場の端でお休み中だ。
ふとアランが両手でブイサインを送って来ている様子が目に入って来て、遠慮がちに小さく手を振る。
するとアランの背後にいる女子から鬼のような眼差しが送られて来て、思わず手を引っ込めてしまう。
あぁ~。やっぱり気のせいなんかじゃないよね、これは……。
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