203 / 395
4カ月遅れの誕生日
10
しおりを挟むふぅん。こんな態度をしてもやっぱり怒らないんだ。
ディオンは私の態度が最近おかしいって言ったけど、それはディオンの方なんじゃないの?
…………
……
甘い匂いに釣られて綿菓子を食べたり、呼び込みに釣られてやったことも見た事もないゲームで遊んだり、香しい醤油の香りに惹かれてイカ焼きを食べたり、と思ったらディオンに盆踊りのようなステージに投げ入れられて見様見真似に踊ったら笑いものにされたり……
楽し過ぎる時間は驚くほど早く過ぎて行った。
ずっと、ディオンとこんな感じで居れたら、幸せなのかもしれない……
そう感じた頃、ふと呪いの事を思い出した。
呪いの事を初めて聞いた時、ディオンは『え、それはお前が……』と言った。
だから私に関する呪いなのは間違いないと思う。
展望台で泣いてしまった日の翌日、ディオンは明らかに私を避けていた。
思い返すと、あの日からディオンの態度にムラがあるように思う。
無視されたと思ったら、優しくなったり、でもやっぱり冷たかったり……
という事は、あの頃辺りに呪いにかかった可能性が高い?
でも、初めっからという可能性もあるよね。
ああ!
一体誰がディオンに呪いなんてかけたのよ!
呪いで苦しんでいるのなら、私が力になれるのならなりたいのに。
ディオンは話したがらないから何も出来ない。
「んだよ」
複雑な気持ちでディオンを見ると、一瞬目が合って、つい逸らしてしまった。
「なに目ぇ逸らしてんだよ。お前ごときが」
「何よ。お前ごときって、酷い。ほんと口悪いよね」
でも、なんで逸らしたんだろう。自分でも分からない。
なんか今ドキッとしたような……
「文句あんのかよ」
「無いわけないじゃん。でも、それも呪いのせいなの?優しかったと思うと、すぐに冷たいディオンに戻るし」
と言うと、私の頬をつねろうとしていたようにしか見えなかったディオンの手がピタリと止まった。
「……聞いちゃ駄目?ディオンに、どんな呪いがかけられているのか」
「お前に関係ねぇし。ほっとけ」
「私に関係無い感じに見えないんだけど。だから、危険だと知りながら、あんな所まで助けに来てくれたんでしょ?」
私の言葉を聞くと、困ったように眉を寄せて目を逸らし、ため息をつく。
「そんなに言い難い事なの?」
覗き込むと、ディオンは目を合わせないままポツリと呟く。
「言いにくい……のか?」
私は自問自答するディオンを静かに見守った。
「分かんねぇ……。でも、おかしいんだよ」
そう言うと、ディオンは前髪を掴んだ。
「おかしい?」
「ああ。お前と出会ってから……。こんなの、俺らしくねぇのに……」
1
お気に入りに追加
52
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです
飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。
だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。
勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し!
そんなお話です。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!
ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。
退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた!
私を陥れようとする兄から逃れ、
不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。
逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋?
異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。
この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?
伯爵令嬢の秘密の知識
シマセイ
ファンタジー
16歳の女子高生 佐藤美咲は、神のミスで交通事故に巻き込まれて死んでしまう。異世界のグランディア王国ルナリス伯爵家のミアとして転生し、前世の記憶と知識チートを授かる。魔法と魔道具を秘密裏に研究しつつ、科学と魔法を融合させた夢を追い、小さな一歩を踏み出す。

転生したら死んだことにされました〜女神の使徒なんて聞いてないよ!〜
家具屋ふふみに
ファンタジー
大学生として普通の生活を送っていた望水 静香はある日、信号無視したトラックに轢かれてそうになっていた女性を助けたことで死んでしまった。が、なんか助けた人は神だったらしく、異世界転生することに。
そして、転生したら...「女には荷が重い」という父親の一言で死んだことにされました。なので、自由に生きさせてください...なのに職業が女神の使徒?!そんなの聞いてないよ?!
しっかりしているように見えてたまにミスをする女神から面倒なことを度々押し付けられ、それを与えられた力でなんとか解決していくけど、次から次に問題が起きたり、なにか不穏な動きがあったり...?
ローブ男たちの目的とは?そして、その黒幕とは一体...?
不定期なので、楽しみにお待ち頂ければ嬉しいです。
拙い文章なので、誤字脱字がありましたらすいません。報告して頂ければその都度訂正させていただきます。
小説家になろう様でも公開しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる