【講談社大賞受賞作品】私を殺したのは、大魔法使い様ですか?

花澄そう

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4カ月遅れの誕生日

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指さした場所を見たディオンは軽く首を傾げる。
「ん?あー、何かやってんな。気になるか?」
「うん」

「じゃあ、あそこまで自分で飛んで行ってみろ」
ディオンは当たり前のように、何キロも先のその場所をさした。

「えっ」
「ほら。行くぞ」
と言った瞬間、ディオンの背中が一瞬で小さくなる。

「行くぞって……っああ!早っ!」
って、どうやって向かえば……。

こんな高い場所で浮いてるだけの私は、米粒のように小さくなったディオンを見ながら焦りが高まる。

「浮くのがイメージなら進むのもイメージ?……だよね」
なんとか進むイメージをしてみる。
でも、ユラユラとフラつくだけで全く前に進まない。

そうこうしているうちに、もうディオンの姿は全く見えなくなっていて……

「も、もう居ない……。酷い……。やっぱ鬼畜講師だ」
うるんだ目になって呟くと「誰が鬼畜講師だ?」という声が真後ろから飛んできた。


驚いて、わきをしめて力いっぱいの握りこぶしを作ってから首だけ振り返る。
すると、不機嫌なディオンが居た。

「にしても魔力が高けぇクセに下手くそだな。センスがねぇのか?」
ライオンを描こうとしてあの猫だったしな、と言われてぐうの音も出ない。

「ほら、ちゃんと進みたい方向に向かうイメージを持て」
「うっ。そんなの、やってるし」
「いいや。さっきお前が持ってたイメージは中途半端なんだよ」
私が持っていたイメージなんて、どうやってディオンに分かるのよ。

「中途半端って?」
「『飛ぶ』事だけをイメージするんじゃなくて、『どこ』に向かって『飛ぶ』のかをしっかりイメージしろ」

どこに向かって、飛ぶのか……
なるほど。イメージは具体的にっていう事ことね。

「ほら、やれ」
「う、うん」
あの賑やかで明かりの集まる場所をじっと見つめる。

そして目を閉じて、そこに向かうイメージする。
すると……


「す、進んでる!!」
超ゆっくりだけど。

「見てみて!ディオン!ちゃんと進んでるよ!」
嬉しくなって振り返り言った言葉に、腰に手を当てたディオンが返す。

「当たり前だ」

ちょっと……っ!!
『凄いな』とか『おめでとう』とかないの!?
って心の中で盛大な文句を言ってのけたけど、ディオンの目を見た瞬間にそんな文句も一瞬で消えた。

言葉こそ悪いけど、ディオンの目は、その言葉にそぐわない位にとても温かくて、まるで私を見守ってくれているかのように見えたから。


……なによ。
そんな目をされると、調子が狂うじゃない。
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