【講談社大賞受賞作品】私を殺したのは、大魔法使い様ですか?

花澄そう

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4カ月遅れの誕生日

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「ここが、スカイツリー?」
「それ以外にどこに行くんだよ」

遠くからしか見たことのないスカイツリーの先端は、糸のように尖って見えたのに、実際に来てみるとヘリポートのように広い場所だったようだ。

いつも思うけど、ディオンは仕事が早すぎて毎回驚いてしまう。
移動するならすると、前もって言ってくれると助かるんだけど……。


辺りを見回す私のに、生まれて初めて夜景が映る。

全体に散らばる光の粒。
湾曲した大きな川の奥には赤い東京タワーが光り輝いていた。

「綺麗……これが夜景というものなのね」
「綺麗か?こんなの、ただの光の集まりだろ」
と言われて残念な目を向けてしまう。

「んだよ」
「別に。そうだったとしても……綺麗なのは綺麗なの!」
「……ふぅん」

どうでも良さそうな声を出すと、宙に浮くディオンは頭の後ろで手を組んで浮いたままもたれかかった。
その様子を見届けた時、足元から春風が吹き上がってきて視線を落とした。

私の目に、フェンスのような網目状になっている床が映る。
そしてその網目から、遥か下に小さくなった建物が沢山見えて、一瞬で体がすくみ上がった。


「いま気付いたけど、ここ、結構怖いね……」
「ん?怖くなんてねぇだろ。さっき居たとこよりか低いし」
「確かに、さっきよりは低いかもしれないけど……、きっと、ディオンは飛べるから怖くないんだよね。いいな……私も飛べたらいいのに」


「何言ってんだ。お前、もう飛べるだろ」


「へっ……?」
訳の分からない事を言われて、豆鉄砲を食らった顔をした私は、次にとんでもない事を言われてしまう。

「やってみろよ」
「やってみろって……え!?まさか、今、ここで?」
「それ以外に何があんだよ」
「いやいや飛べるわけないでしょ!?何言ってるの?あれはSクラスでも出来ない人が大半の魔法で……」

「つべこべ言わず、やってみろって」
と、ディオンに指さされた瞬間、私の身体はふわりと浮き上がった。

「ちょっ、何して……」
クレーンゲームで釣り上げられてるかのような私は、手足をばたつかせ、向かう方向から嫌な予感が一気に湧き上がる。

「飛べたらこんな所、怖いなんて思わねぇだろ。ってか、さっきだって実は怖かったんだろ」
と言われてギクリとしている間に、展望台の床を超えそうな場所まで移動していた。

「ディ、ディオンッ……」
叫ぶと、グンと外に引っ張られる感覚が走った。


そして次の瞬間、私は予想通り、スカイツリーの外にほっぽり出されてしまった。

「きゃぁぁぁぁ~~~~!!」
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