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4カ月遅れの誕生日

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「あっ……違う。これはっ、忘れてたんじゃなくって」
慌てて手を離して後ずさりする私の体温は、だんだん上がっていく。

そんな私にため息を落とすディオンは、最近ずっと定位置だったロッキングチェアをきしませ、ひじをついて指先をこめかみに当てた。

「ってか行きたいって、どこに行きてぇんだ?」
「どこでもいい」
だんだん期待に満ち溢れていく感覚がする。

「は?なんだそれ」

私は外の世界を知らない。
5歳まで家から一歩も出る事も許されず、その次はこの学園に入れられた。

外の世界で知るのは、本の情報と展望台から小さく見える建物くらいだ。


だから、もし復讐という使命がなかったら……私はきっとこう願ったと思う!


「今すぐ行きたい!学園の外に出てみたい!」


私の言葉に「あぁ、そういう事か」と納得したような声を出すと、「ん」と言って手を出してきた。

本当に、今から連れ出してくれるんだ。
この閉鎖された空間から……


爆発しそうな程のワクワク感と小さな緊張感を抱えながら、差し出された手に自分の手を乗せた。


すると次の瞬間、目の前の景色が変わって、私は上空にいた。

「……っ」

まだ心の準備が出来ていなかった私は、大きな口を開けて足元を見下ろす。
するとジオラマみたいに小さくなった学園が私の瞳に映り込んだ。

「本当に……出れた……」


12年間、心底出たいと思い続けた学園。
そこを、いとも簡単に出れてしまった事に信じられない気持ちで見下ろしていると、ふと片手を繋いでいるだけで落下しないのかが不安になってきた。

慌ててディオンのもう一つの手を引き寄せ握りしめると、その行動に首を傾げられる。

「なんだ?この手は」
また、近付きすぎとか言われる?

「えっ、ね、念のため?」
「は?」
片手だと怖いとか言ったら、馬鹿にされそうで咄嗟とっさに誤魔化す。
馬鹿にされるだけだとまだいいけど、もてあそばれると最悪だ。

そんな事を考えているとは知らないディオンは、困り果てたような声を出す。
「……それにしても難しいな」


「何が?」
「お前が出たいって言ったから、とりあえず学園は出たけど……。女が好きな場所とか全く分かんねぇ」

その言葉に、私もどこがいいのか考えてみるけど、この世界には何があるのかさえ分からないから困った。

例えでネズミーランドの名前が出たけど、もう夕方だし、ディオンと遊園地に行くのは違う気がするし……

と思って街を見下ろすと、展望台からずっと先端だけ見えていたスカイツリーに目が留まった。

「ディオン」
「ん?」
「私、スカイツリーに行きたい!」
そう言ってスカイツリーを指さした。

すると、分かった、という言葉が鼓膜こまくに到着するころには目の前の景色が変わって、私はヘリポートみたいな所に立っていた。
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