【講談社大賞受賞作品】私を殺したのは、大魔法使い様ですか?

花澄そう

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4カ月遅れの誕生日

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今でも信じられないけど、目覚めてからというもの、辺りの魔力に意識を集中すると、魔力が視覚で見えるようになっていた。

初めは人を取り巻くもやの正体がなんなのか分からなくて、お見舞いに来てくれていたメイに聞いてみたけど、何言ってるの?と首を傾げられただけだった。

これが魔力だと気付くまで、幻覚でも見えるようになったのかと不安に思ったものだ。



この目に映る魔力が本当に正しいのなら、ディオンの魔力は驚く程に強大だ。

どれくらい強大かというと、外を歩いているSクラスの生徒とはけた違いで、世に名が知れ渡っている学園長よりも断然多い。

でも、過去の言動を思い出すと、ディオンはその魔力を隠しているように思う。

だから、すぐにでも真相しんそうを知りたい所だけど、何か理由があるんだろうと思って聞いていない。だから見える事も話していない。


本当は、学園中でも頂点と言われる人たちでも、魔力をかすかに感じるのが関の山なのに、こんなにハッキリと視覚で見えるのはどういう状況なのかも聞きたいんだけど……。ディオンなら知ってそうだし。

それに、私の魔力が安定しない時に、密《ひそ》かに私の魔力を整えてくれていた事にもお礼もちゃんと言いたい。
でも、ディオンの凄い魔力を知っていないフリをしないといけないから、しっかりお礼を言えないのがもどかしい。


「何さっきからけわしい顔してんだよ」
そう言われて意識が戻ってくる。

「人生って難しいし、分からない事だらけだなぁ~って思って」
「は?なんだそれ」

謎だらけで気持ち悪いって言ってたディオンの気持ちが、今なら凄く分かる気がする。

「当たり前だろ。お前まだ17年しか生きてねぇんだから」
すぐに17という数字に違和感を感じて、目をパチクリとさせる。

「……17……?あっそうだった!私もう17歳だったんだね!」
誕生日直前に倒れて、そのまま17になったんだった。

「……しゃーねぇ、誕生日を祝ってやるか」
突然出て来たその言葉に数秒考えてから首を傾げる。

「誕生日って……ディオンの?」


「お前、聞いてたか?俺は、って言ったんだよ」
「それは知ってるけど……。じゃあ誰の誕生日?」
「お前だろ。話の流れ読めよ」
「えっ……」
ディオンは、私の誕生日を勘違いしてるんだろうか。

「私の誕生日は12月だよ?そして今は4月で……」
「知ってる」
「えっ……」
その言葉で、余計分からなくなる。

「あんな事になったのは俺の読みが甘かったせいだ。そのせいでお前の誕生日をすっ飛ばしてしまったから、せめてものつぐないをしてやるって言ってんだ」

償い……って、なんだかディオンらしかぬ言葉だなと思いながらも、続く言葉に耳を傾けた。

「やりたいことや、欲しい物、なんでも言え。俺ならだいたいの事は叶えてやれる」

なんでも……
叶えてくれる……?
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