【講談社大賞受賞作品】私を殺したのは、大魔法使い様ですか?

花澄そう

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不安定な魔力

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知りたくなかった事実に、今はまだしっかりと向き合うのは難しいと感じた私は、いったん心に大きな蓋をした。


その時、クラスメイトとの間にできた隙間から、ひじ置きにひじをついて頬杖をつくディオンと目が合った。

私はディオンに大きく口を開けて、声を発さずに「あ・り・が・と・う」と伝えた。
すると、突然頭の中に直接話しかけられるように、ディオンの声が響いた。


『るせぇよ馬鹿』
その事に驚いて目を丸くした私の頭に、再び声が響く。

『で、俺の言った事、本当だっただろ?』
再度響いたディオンの声に、これがテレパシーというものなのではないかと思った。


でも、記憶違いかな?
確か上級以上の魔法使いにしか使えない魔法だったような……


テレパシーの返し方が分からない私は、言葉の代わりに満面の笑顔を返した。
すると、ディオンの口角がゆっくりと上がって目を優し気に細めた。


初めて見た。
ディオンが微笑む姿を。


その姿は恐ろしいほどに美しくて、綺麗で、思わず見とれてしまった。

出窓から差し込む温かい日差しも相まって、余計に美しく見えたのかもしれない。



こんな、全てを持っていかれそうな程に魅力的な笑みを浮かべている人がすぐそこにいるのに、きっと私以外、誰も気付いていない。

でも……
私しか気づいていないという事に、なぜかとてもホッとしてしまった。



私が倒れた事で、沢山の人に心配をかけてしまった。
その事はやっぱり申し訳ない気持ちになるけど、私は今回の出来事があって良かったと思っている。

だって、私には、こんなにも愛してくれる友人がいるんだって、ちゃんと知ることが出来たから。


そして…………
ディオンが私を助けに来てくれたという事が、本当に嬉しかったから。
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