【講談社大賞受賞作品】私を殺したのは、大魔法使い様ですか?

花澄そう

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不安定な魔力

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「あー、あのウザいの、お前の親だったのか?ってかなんで4人もいんだよ」
「あんた!私の両親に何をしたのよ!!」

食って掛かりたいのに身長差がひどくて叶わず、急遽きゅうきょ作戦変更をして弁慶べんけいの泣き所をろうとしてみたけど、今度は華麗かれいに避けられてしまう。

「お前のやる事なんて、だいたい分かってんだよ」
そう言いながら、美男子は私と目線を合わすようにしゃがみこんだ。
鋭い目が私をとらえる。

「あいつらは別に死んだわけじゃない。お前が勝手に作り出した幻想だったからここから消しただけだ。なんかごちゃごちゃとうるせぇし」
「……幻想?」
私が作り出した?

美男子は私のほほをペチッと叩いて来る。でも、頬には驚くほどに傷みが無い。

「愛された事がない?だっけ?」
「え?」
「勝手に決めつけんな。お前……それを毎日泣きそうな顔でお見舞いに来るメイや、クラスメイトの前で言えるのかよ」
その瞬間、ふわっと脳裏に浮き上がる謎の女性の顔に心を乱れる。

「えっ……」
「そのデけぇ目は何を見るためについてんだ?」



据わった目なのに、怖くない。それどころか温かみを感じてしまう。

私、やっぱりこの目をよく知ってる。
なのにどうして思い出せないんだろう。


「俺と違ってお前の事を必要としてる奴は五万といるだろうが。
その証拠に、みんな待ってんだよ。お前が戻ってくる日を」
そう言うと目の前の美男子は、すっと立ち上がった。

「みんな……って?」
自分の倍くらいはありそうなこの美男子を見上げる。

「ここで言っても多分無駄だ。でも戻れば分かる」

その言葉にハテナを浮かべてしまう。

「さっき言った事、ほ……本当……?」
「ん?お前を必要としてる奴の話か?」
その言葉にコクンとうなずく。

「ああ、本当だ。ウゼぇくらいにお前を待ってる。だからさっさと戻るぞ」
美男子はニッと笑うと、ん、と言って手を出してくる。
私は、その大きな手を一瞬躊躇ためらってから握った。

すると次の瞬間、指の先から記憶の細胞がよみがえるような感覚が走り抜けた。


「……ディ……オン……?」
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