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不安定な魔力
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私は身を守るようき、二の腕を掴む。
まさか……両親の回し者?
だったら、なんの為に……?
お金ならちゃんと毎月きっちり振り込んでいるのに。
「お前が話たんだろ。いや、お前か……?」
自問自答するみたいに訳の分からない事を言って空を仰ぐ美男子に、警戒心から心臓がバクバクと音が鳴る。
空から視線が戻ってくると、無表情のままグッと私を覗き込んだ。
そして、とんでもない事を口にしてきた。
「殺してやろうか?」
「え……」
「お前を苦しめる奴ら、全員」
そんなセリフに、変な汗が出てくるのが分かった。
私を……苦しめる人、全員……。
殺す……?
一瞬で鮮明に浮かんできた両親の顔に、ぶんぶんと頭を振る。
「な、何言って……」
「俺なら出来る」
そんな現実離れしたような事を、現実離れした綺麗な顔で言ってくるからか――1ミリたりとも目が離せない。
「ぶ、物騒な事言わないで下さい!こういうの、冗談でもよくないと思いますよ!」
「冗談じゃねぇよ。お前はすぐ大事な時に冗談だって言うな」
「えっ?私?」
そんな話、一度もした事がないはずなんだけど……
でもその目は、冗談なんて言っているような目には見えない。
「とりあえず、大丈夫ですから。もうこんな生活……慣れてるし」
額に手を当てた時、自然と小さなため息が出た。
なんだか、さっきよりも胃が痛む。
「は?そんなの慣れんじゃねぇよ!」
この人、怖いのか優しいのか……一体どっちなんだろう。本当におかしな人。
でも、とりあえず早く帰って、今日こそはある程度寝たい。
「お前はそれでいいのかよ!」
「いい……とか……そんなの……」
いいわけ無い。
でも、望んだ所で悲しくなるだけだから……。
「これでも前よりはマシになったし。それに私、もうすぐ結婚するから。そしたらこんな生活も、少しは良くなるかもしれないし……」
そう。結婚したら支え合える人が出来る。
包容力もありそうなあの人となら、もしかして……きっと……
「……は?結婚?」
その時、目の前の美男子の目が一気に吊り上がり、私のすぐ後ろの大理石の壁をダン!と強く叩いた。
「今、結婚って言ったか!?」
その行動に、驚き目を見開いた。
「えっちょっと……」
こんなやりとりを、会社帰りの人たちが横目で見ながら通り過ぎていく。
その事が恥ずかしいと思った次の瞬間――彼は手の内に私を挟み込んだ。
「お前、まさかそいつの事が好きなのか!?」
「……!?」
な、なんでそんな事を聞くの?
というか近い!!
「どうなんだ!」
「えっ、好き……とかじゃないけど……。でもいい人で……」
「いい人?お前……それだけで結婚なんてすんのかよ!」
同じことを友人にも言われた。
でも、もうこんな毎日はうんざりで、辛くて……早く何かを変えたかった。
話をして知った。
婚約者である彼も、私と同じような気持ちだって。
だからお互い『好き』とかではないけど、今の生活を変える為にすぐに結婚をすることにした。
今よりは幸せになれる、という希望を抱いて……
「結婚なんて……するなよっ!」
その時、さっきまで黒だった彼の瞳の色が突然寒色に変わったのが見えて、目の錯覚かと思った。
まさか……両親の回し者?
だったら、なんの為に……?
お金ならちゃんと毎月きっちり振り込んでいるのに。
「お前が話たんだろ。いや、お前か……?」
自問自答するみたいに訳の分からない事を言って空を仰ぐ美男子に、警戒心から心臓がバクバクと音が鳴る。
空から視線が戻ってくると、無表情のままグッと私を覗き込んだ。
そして、とんでもない事を口にしてきた。
「殺してやろうか?」
「え……」
「お前を苦しめる奴ら、全員」
そんなセリフに、変な汗が出てくるのが分かった。
私を……苦しめる人、全員……。
殺す……?
一瞬で鮮明に浮かんできた両親の顔に、ぶんぶんと頭を振る。
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そんな現実離れしたような事を、現実離れした綺麗な顔で言ってくるからか――1ミリたりとも目が離せない。
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そんな話、一度もした事がないはずなんだけど……
でもその目は、冗談なんて言っているような目には見えない。
「とりあえず、大丈夫ですから。もうこんな生活……慣れてるし」
額に手を当てた時、自然と小さなため息が出た。
なんだか、さっきよりも胃が痛む。
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でも、とりあえず早く帰って、今日こそはある程度寝たい。
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いいわけ無い。
でも、望んだ所で悲しくなるだけだから……。
「これでも前よりはマシになったし。それに私、もうすぐ結婚するから。そしたらこんな生活も、少しは良くなるかもしれないし……」
そう。結婚したら支え合える人が出来る。
包容力もありそうなあの人となら、もしかして……きっと……
「……は?結婚?」
その時、目の前の美男子の目が一気に吊り上がり、私のすぐ後ろの大理石の壁をダン!と強く叩いた。
「今、結婚って言ったか!?」
その行動に、驚き目を見開いた。
「えっちょっと……」
こんなやりとりを、会社帰りの人たちが横目で見ながら通り過ぎていく。
その事が恥ずかしいと思った次の瞬間――彼は手の内に私を挟み込んだ。
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「……!?」
な、なんでそんな事を聞くの?
というか近い!!
「どうなんだ!」
「えっ、好き……とかじゃないけど……。でもいい人で……」
「いい人?お前……それだけで結婚なんてすんのかよ!」
同じことを友人にも言われた。
でも、もうこんな毎日はうんざりで、辛くて……早く何かを変えたかった。
話をして知った。
婚約者である彼も、私と同じような気持ちだって。
だからお互い『好き』とかではないけど、今の生活を変える為にすぐに結婚をすることにした。
今よりは幸せになれる、という希望を抱いて……
「結婚なんて……するなよっ!」
その時、さっきまで黒だった彼の瞳の色が突然寒色に変わったのが見えて、目の錯覚かと思った。
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