【講談社大賞受賞作品】私を殺したのは、大魔法使い様ですか?

花澄そう

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不安定な魔力

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ご祝儀狙い!!??

絶対そうだ!それしか考えられない!

ど、どうしよう……っ!
私だけのご祝儀じゃないのに。
もし両親が貰っていくって聞かなかったら……。

いや、半分あげれば許してくれる?
手切れ金だと思えば安い?
でも半分で許してくれなかったら……もうどうしていいのか分からない。

婚約者であるあの人は、そんな私の親を見てどう思うんだろう。
親と縁を切ってるっていうのは伝えてるけど……詳しく話した事はない。

友人の紹介で知り合った一回り上の彼。
正直、何度かしか顔を合わせてないけど、世間を知らず、どこに行っても右も左も分からない私を『幸せにしたい』と言ってくれた唯一の人。

だから絶対に迷惑なんてかけたくないのに。

はぁー。
きっと、こんな状態で縁が切れてるなんて言えなかったんだ。
そこが間違いだったんだ。

じゃあ、私はいま、何のために身を粉にして働いているんだろうか。


普通の家に生まれたかった……
親ガチャ運が悪すぎだよ。


キリキリと痛くなった胃を押さえて会社の建物から出ると、待っていたかのよう声をかけられる。

「仕事終わった?」

振り返ると、大理石の壁にもたれかかっている、とんでもなく美しい美男子がいた。

長めの黒髪のショートカットで背も高くて、この姿はまるでテレビから抜け出たイケメン俳優のよう。
初めて見た時は、何故なぜか女の子みたいに髪が長かったけど……


この人とは、数日前に出会ったばかりだ。

帰り道である公園で、この人が倒れていた所を介抱かいほうしただけなんだけど……


今日いたんだ。


「どうしたんですか?」
と、警戒心たっぷりで聞いてしまう。

「遅せぇな。いつもこんな時間に終わってんの?」
「えっ……はい」
「ふぅん」
ん?なんだろ。なんか不満そう?

というか、まさかこの人、私を待ってた……とかないよね?
もうすぐ日付が変わる時間なんだけど……

前回はたまたま通りがかったと言っていたけど、前回から今日まで、まだ数日しか経っていない。
さすがに警戒してしまう。これって考えすぎなんだろうか?

うーん、と考え込んでいると、突然手首を掴まれてドキっと心臓が跳ねた。
「えっ!?」
「やせ細ってんじゃん。ちゃんと食ってんのか?」

前も思ったけど、なんてデリカシーの無い人。
当たり前みたいにズカズカとプライバシー領域に足を突っ込んでくる。

「こんなになるまで働くんじゃねぇよ」
「前に、生活のためだって言いましたよね?」
やせ細ってるって、ずっとこの体型なんだけど。普通の人たちと比べないでほしい。

「嘘だ」
「え」

美男子が首を傾げて見下すように言った次の言葉に、一瞬で寒気が走った。
「……あの、クソ親のせいだろ?」

なんで!?
この人に両親の話をした事なんてない。
と言うか、誰にも話した事がない。

なのに、どうして知ってるの?

「私の両親を知ってるの……?」
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