【講談社大賞受賞作品】私を殺したのは、大魔法使い様ですか?

花澄そう

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ついに進級試験

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そして、ディオンは手にしていたネックレスを見せつけるようにして、私が最も聞きたくなかった言葉を口にした。


「お前は、この魔道具のせいで……ずっと魔力を封じ込められていたんだよ」
「……っ」

……やめて……


「塔の奴らの魔力を封印する魔道具があるって言っただろ。やっぱりこれは、あれと同じような闇魔法がかけられていた」
慌てて耳を塞ぐも、もう遅い。

「や、やだ!き、聞きたくない……っ!!」
塞いでいる手が、大きく震えている。

飲み込むことの出来ない事実を突きつけられて、私ごと、この世から消えてしまいたくなる。


「嘘よ……」

ずっと、不安だった。
私に笑いかけてくれていた両親の記憶が遠いかなたに行けば行くほど、不安に押しつぶされそうになっていた。

友人の誕生日が来るたびに、心の奥で羨ましくて悲しい気持ちでいっぱいになった。
入っているわけないのに、毎年、誕生日になると学園口座を確認しては、肩を落としていた。


こんな、誰かの命を犠牲にして作られた恐ろしい魔道具を、たった4歳の私に付けさせて……、絶対外すなと言って来た両親。

そこに、愛があるわけない。
愛があったら、そんな物付けさせないはずだ。


じゃあ、お父さんとお母さんは、私を愛してくれていなかった……?


もしそうなら……私を愛してくれる人なんて、どこにも居ない……?


「うっ……」
その時、さっきまで感じていた体の芯の熱が、炎が燃え盛るかのように酷くなった。
胸の奥深くから、波打つように力がみなぎってくる。
全身が震えて、息が詰まるほどの圧力を感じる。

「はぁ……はぁ……」
「来たか。くっ……」
何も考えられなくなりそうな中、ディオンのそんな言葉が耳に入ってくる。
冷や汗が流れる中、薄く目を開けると、ディオンはなにやら私に魔法をかけているようだった。

何をしているのかなんて聞く余裕もない。
今の状況を耐えているだけで精一杯。

「嘘だろ……」
ディオンの顔が青ざめていく。

体中の細胞が活性化し、エネルギーが溢れ出しそうな感覚に、ついに叫び声が口から飛び出した。
「あぁっ……!」

その時、突然立っていられない程の眩暈めまいがして……

「えっ、おい!」

私の視界は暗闇につつまれた。


その後、私の名前を呼ぶディオンの声が真っ暗な視界の中で何度か、ひどくボヤけて聞こえた。

その声に、なぜかみょう既視感きしかんを感じた。


でも、記憶の中からその声を探し当てるより先に、私の意識がプツっと消えてしまった。


…………

……

「結婚なんてしてみろ。すぐにお前をぶっ殺してやるからな」

なんだっけ……。

遠い昔に聞いた台詞セリフが、突然頭の中に浮かんできた。
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