【講談社大賞受賞作品】私を殺したのは、大魔法使い様ですか?

花澄そう

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ついに進級試験

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「え?」
「もし保健室に、誰も居なかったらどうするつもりなの?今は誰も居ない可能性の方が高いと思うよ?」
「居なかったら……?そんなの誰か呼んで来ますよ?」

何を言ってるんだろう。本当に急がないと駄目だわ。
一応もし誰も居なかったら、勝手にベッドを借りても大丈夫だよね?足元もフラ付いてそうだし。

「はは、そういう話してるんじゃないんだけどなぁ。……そういう考えをされているのって結構悲しいんだよ……知ってた?」
「悲しい?」
「……あぁ、でもそういう……何も分かってなさそうな所も……きだよ」

声が小さくて、私の聞き間違いだと思った。
「えっ……」
「シエルちゃんが好きだ。好き過ぎて……本当に困るくらい……」

熱を帯びた大きな瞳で、ハッキリと『好き』と言われてほほにボッと火が付く。

って……、本気にしちゃ駄目だ!!
きっと酔いすぎて適当な事を言ってるだけなんだから!!

「僕の言葉、信じてくれてないんだろうな……」
「よ……酔ってる人の言葉なんて信じられないです!」
「でも……いつもだよね。あとさ、僕って、そんなに魅力ない?」
「えっ……」
魅力しかない瞳に見つめられて一瞬ドキっとするも、悠長ゆうちょうにドキドキなんてしてられないと身をふるい立たせた。

「と……とりあえず保健室へ行きましょう!」
そう言ってローレンの元に足を向けると――
突然、間を割るように目の前に誰かが立ちふさがった。



「クソッ!……俺の忠告が無意味で、ほんと嫌になる」

私の視界の中で、クセのない白銀の髪がサラリと揺れた。


なんでディオンがここに……。
もう今年は会う事は無いと思っていたのに。

「あれ、誰かと思ったら、カミヅキ講師じゃないですか。今日はいらっしゃらない日だと認識してたのですが?」
「さすが、よく知ってんな。お前のクラスを担当してるわけじゃねぇのに」
「当たり前ですよ。シエルちゃんのクラスを担当してるんですから」
そう言うとローレンが何かを含むように目を細めた。

「で……この状況は、どうとらえたらいいですか?まさか……宣戦布告、ですか?」
「は?んなわけねぇだろ」

困った……。
さっきから二人の会話が成立してるようだけど、私だけ全く意味が分からない。


「そうですか。ホッとしました。誰かに見張られているのは感じていましたが、こんなタイミングで現れたので、宣戦布告かと思ってしまいましたよ」

「お前、前から思っていたけどウザイな」
「それはこっちのセリフです」
その瞬間、二人の間に火花見えた気がした。

「宣戦布告じゃ無いのでしたら、もう2人だけにして頂けますか?意味、分かりますよね?」
甘い声でディオンにそうささやいたローレンは、ディオンの横を通り過ぎて私の肩に手をそっと置いた。

「シエルちゃん、じゃあ保健室に連れてってくれるかな?」
「えっ、はい……」

その時、ブチっと何かがキレる音が聞こえたと思うと、私の肩に乗せていたローレンの手を、ディオンが凄い勢いではたき飛ばした。

その事に驚いた瞬間、ディオンに急に引き寄せられ、視界がぐるりと回った。三半規管が混乱するほどのスピードで顔を掴んで振り返らされたと思うと――

次の瞬間、ディオンは私の唇を塞いできた。
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