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ついに進級試験
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肌を確かめるように撫でてくるローレンに、もうどうしていいのか分からずに固まっていると、うっとりとした目をしたローレンが深いため息をついた。
「はぁ……。可愛い……」
いつもと違うローレンに何も返せない私は、どんな顔をしていいのか分からない。
「こんなに可愛いと……もう、罪だよ……」
でも、そんな言葉に勝手に頬に熱を持つ。
ローレンの手は、頬からこめかみ、耳裏と滑る。
「ローレン?……なんか、今日いつもと……」
「駄目だな……。僕……歯止めきかなくなりそうだよ……」
「……え?」
歯止めきかなくなる、とは?
「シエルちゃんが、可愛いすぎるからいけないんだよ……」
私に触れる手が離れると、ローレンは、私を挟み込むようにしてテラスの手すりに手をついた。
ローレンの腕の中に閉じ込められた私は、そんなローレンの行動に驚きながら背の高いローレンの顔を見上げる。
すると、可愛さも感じるようなとても綺麗な顔が私の視界をいっぱいに占めていた。
数年の付き合いだけど、こんな近くでローレンの顔を見るのなんて初めてだ。
「ローレン……?」
その時、私の鼻先にふわりとチェリーとプラムの果実の香りが漂って来た。
この香り、なんだっけ……
なんか嫌な記憶と重なるような……
あ!そうだ!去年のパーティで出されていたワインだ!
去年はぶどうジュースと間違って飲んでしまって、大変な事になったのよね。
……って事は……
「まさかローレンっ!お酒飲んだのですか!?」
なんかおかしいと思ったら……そういう事!?
「飲んだよ、だから何?」
悪びれもなく言われて驚く。
「どうしてですか?」
ローレンはお酒に弱く、何度か記憶を失った事があると本人から聞いた。
だからもう飲まないよ、って宣言までしていたのに……。
ちなみに、この世界での飲酒は18歳からだから、ローレンが飲むことに関しては法律上の問題はない。
「はは……。飲まずになんて、いられるわけないでしょ」
ふら付く頭を押さえながら、私から数歩下がったローレンは苦笑いを浮かべた。
「どうして?何かあったの?」
私の言葉に、ローレンは顔を持ち上げて静かに目を吊り上がらせた。
「……あんな奴と……仲良く手なんて繋いで入場して来るのを見て、僕がどれだけ不愉快な気分になったか、分からないの!?」
私は怒鳴るように言ったローレンの言葉の意味がよく理解出来ず、ぐっと眉を寄せた。
「不愉快……って?」
もしかして、アランと手を繋いで入場した事が?
「あいつ……いくら脅しても引くどころか、むしろ積極的になって来やがって……っ!」
えっ……脅し!?あいつ!?
というか、口調が!いつもの穏やかで紳士なローレンはどこ!?
「なんなんだよ!今までは……ずっと上手く行ってたのに……。なんであいつだけは引かねぇんだよ!」
独り言のように呟くローレンの言葉は、普段紳士で誠実なローレンが絶対使わないような言葉口調で、酔うと人が変わるタイプなんだと思った。
「ローレン。保健室行こう」
よく見ると目も少し据わってるし、耳まで真っ赤だ。
アルコールって魔法で抜けるのかな?
治癒魔法で外傷は治せるけど、病気は治せない。……アルコールはどっちになるんだろう?
「シエルちゃん……いいの?今のこんな僕を、保健室なんかに連れて行って」
「はぁ……。可愛い……」
いつもと違うローレンに何も返せない私は、どんな顔をしていいのか分からない。
「こんなに可愛いと……もう、罪だよ……」
でも、そんな言葉に勝手に頬に熱を持つ。
ローレンの手は、頬からこめかみ、耳裏と滑る。
「ローレン?……なんか、今日いつもと……」
「駄目だな……。僕……歯止めきかなくなりそうだよ……」
「……え?」
歯止めきかなくなる、とは?
「シエルちゃんが、可愛いすぎるからいけないんだよ……」
私に触れる手が離れると、ローレンは、私を挟み込むようにしてテラスの手すりに手をついた。
ローレンの腕の中に閉じ込められた私は、そんなローレンの行動に驚きながら背の高いローレンの顔を見上げる。
すると、可愛さも感じるようなとても綺麗な顔が私の視界をいっぱいに占めていた。
数年の付き合いだけど、こんな近くでローレンの顔を見るのなんて初めてだ。
「ローレン……?」
その時、私の鼻先にふわりとチェリーとプラムの果実の香りが漂って来た。
この香り、なんだっけ……
なんか嫌な記憶と重なるような……
あ!そうだ!去年のパーティで出されていたワインだ!
去年はぶどうジュースと間違って飲んでしまって、大変な事になったのよね。
……って事は……
「まさかローレンっ!お酒飲んだのですか!?」
なんかおかしいと思ったら……そういう事!?
「飲んだよ、だから何?」
悪びれもなく言われて驚く。
「どうしてですか?」
ローレンはお酒に弱く、何度か記憶を失った事があると本人から聞いた。
だからもう飲まないよ、って宣言までしていたのに……。
ちなみに、この世界での飲酒は18歳からだから、ローレンが飲むことに関しては法律上の問題はない。
「はは……。飲まずになんて、いられるわけないでしょ」
ふら付く頭を押さえながら、私から数歩下がったローレンは苦笑いを浮かべた。
「どうして?何かあったの?」
私の言葉に、ローレンは顔を持ち上げて静かに目を吊り上がらせた。
「……あんな奴と……仲良く手なんて繋いで入場して来るのを見て、僕がどれだけ不愉快な気分になったか、分からないの!?」
私は怒鳴るように言ったローレンの言葉の意味がよく理解出来ず、ぐっと眉を寄せた。
「不愉快……って?」
もしかして、アランと手を繋いで入場した事が?
「あいつ……いくら脅しても引くどころか、むしろ積極的になって来やがって……っ!」
えっ……脅し!?あいつ!?
というか、口調が!いつもの穏やかで紳士なローレンはどこ!?
「なんなんだよ!今までは……ずっと上手く行ってたのに……。なんであいつだけは引かねぇんだよ!」
独り言のように呟くローレンの言葉は、普段紳士で誠実なローレンが絶対使わないような言葉口調で、酔うと人が変わるタイプなんだと思った。
「ローレン。保健室行こう」
よく見ると目も少し据わってるし、耳まで真っ赤だ。
アルコールって魔法で抜けるのかな?
治癒魔法で外傷は治せるけど、病気は治せない。……アルコールはどっちになるんだろう?
「シエルちゃん……いいの?今のこんな僕を、保健室なんかに連れて行って」
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