【講談社大賞受賞作品】私を殺したのは、大魔法使い様ですか?

花澄そう

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ついに進級試験

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でも、ディオンは指先をこちらに向けたまま、何もしてこない。
不思議に思ったその時、ギリっと歯を食いしばった音が落ちて来た。

「クソッ!またかよ!!もう知らねぇ!」
ディオンは、舌打ちの音を残して目の前から消えてしまった。

直後、私は骨が無くなったかのように体の力が一瞬で抜け落ち、ぼふっとソファに背を預けた。

…………

……

「あのタチバナって奴、学園最弱だったくせに、飛び級なんておかしいと思わない?魔力覚醒だとか言ってるけど、それも怪しいし」

この前の出来事を思い出している間に、さっきの女子達の会話が一変して私の話になっていてた。
耳を傾けたくないのに傾けてしまう自分が悲しい。


「絶対おかしいよね!講師や学園長に色仕掛けしてんじゃないの?」
「あー、ありえる。やりそー」

何?講師にって……。

私、一度たりとも色仕掛けなんてした事ないんだけど。
なんなら、前世も今世も処女なんですけど!


「努力なしで体ばっか使って、マジでキモイし死んでほしい。ちゃんと頭使えよなぁ」
「顔だって、ちょっと位いいからってさー。最近完全に調子乗ってるよねぇ」
「ねー」

好き勝手に言いたい放題言ってる2人の会話を聞いていると、当たり前だけどだんだん腹が立って来る。

「あれが上級クラス棟に来るとか、マジで勘弁して欲しい。永遠に下級棟にいろっての……」

しばらく一人になりたかったけど、これ以上続くようなら何か言わないと気が済まない、と思い始めた所で聞きなれた声が聞こえた。


「努力ならしてるよ。君らよりはね」
その声にドアの影から顔半分だけ出して覗くと、そこには真っ白のスーツを着た、ローレンらしき姿があった。

「サ……サオトメ様っ!?いつからそこに……」
「違うんですっ!私たちは……」

「違うって、どう違うの?是非教え欲しいな」
ローレンの声から怒りがにじみ出しているように感じた。

「だって……おかしいと思いませんか?あんなに魔力が無かった底辺の女が、急に飛び級だなんて……。そんなの、絶対裏があるに決まってるじゃないですか!サオトメ様だって出してないのに!」
「……それって証拠はあるの?」
「そ……それは……、無いですけど。でも、私たちだけじゃなくてみんな思ってますよ!ジョウガサキさんはまともな結果だけど、タチバナさんは裏で何かしたんじゃないかって!」

「みんなって、誰?良かったら今すぐここに連れてきてよ。じっくり言い分を聞きたいなぁ。そんなくだらない話を広めるくらいなんだから、大した証拠でもあるんだろうし、ね」


ローレンのこんな顔、初めて見た。
笑っているのに目が全然笑ってない。
腹の底で凄く怒ってる事が分かるその横顔に、初めて怖さを感じた。


「どうしたの?黙ってちゃ分からないよ?」
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