【講談社大賞受賞作品】私を殺したのは、大魔法使い様ですか?

花澄そう

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ついに進級試験

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「それもあるけど……」
覗き込むアランをチラっと見る。

「ああ。そういう事か。……なら、出た方が早い」
と謎の言葉を落としてきたアランはグイっと私を引っ張ってステージに連れ出していく。

「えっ、ちょっとアラン!」

眩しい照明が私を包み込んだ時――

「え……嘘っ。あれがあのミジンコ?」
「超綺麗……」
「ドレスかわいい~」
「ヤバ、いつも以上に可愛いんだけど……」

私を見る人達の顔が、私の瞳に映った。

私は、心の準備をする前に、アランに引っ張られてステージ上に出てしまっていたようだ。

「ほら、見てみ。シエルちゃんを見るあの子らの顔を。キラキラしてるやろ?」
アランの言葉を受けて見てみると、確かに私に向かう顔がキラキラしている気がした。


「あれはシエルちゃんが可愛いって思ってる証拠や」
白い歯を出し言われたアランの言葉に、まるで魔法がかかったみたいに不安が消えていく。

メイも、ルイーゼも、ラブ片手に笑顔を向けてくれている。

「だからもっと自信持ってええ。可愛いのは俺が保証する!」
アランに励まされるように背中をトンと叩かれて、じわりと勇気まで出てくる。


そんなに顔に出てたのかな?

やっぱり、アランはチャラい所もあるけど凄く優しい。
でも、優しければ優しいほど、気持ちにこたえれない罪悪感で胸の奥の方が痛む。


渡されたマイクで、笑いも混ぜながら悠長に挨拶をするアランは、もう既に学園の人気物だった。
そんな姿を見ながら、どうして私なんかを好きなったのかと不思議に思った。


…………

……

パーティ会場から気配を消しながら開けっ放しのテラスに出た私は、やっと一人になれた事に長いため息をつく。

「はー、疲れた……」

ホーホーと聞こえて夜空を見上げると、宙に止まっているフクロウが見えた。

一瞬なんであんな所に!?
と思ったけど、よく見るとテラスを覆《おお》う透明の壁が月明りが反射して見えて、すぐに状況を把握した。

あれは時々講師とかがやる定番の防寒対策だ。
12月の夜だし、当然といっちゃ当然かも。扉も窓も全部開いてるしね。

それにしても、ラブは大丈夫かな?
ルイーゼ達が、進級したら会いにくくなるからって、ここに来てからずっとラブの面倒をみてくれているけど、食べ過ぎたりしてないだろうか?最近太ってきてるし心配だな。


そんな事を考えていた時、私しか居なかったテラスに誰かが入って来る足音がした。
しばらくは誰にも話しかけられたくなかった私は、咄嗟とっさそばにあったテラスのドアの影に隠れた。



「あーん、カミヅキ講師がいないの残念」
「今日授業の日じゃないもんね。見たかったなぁ~カミヅキ様のスーツ姿。絶対カッコイイのに!」
「でもカミヅキ講師ってこういうイベントに参加したことなくない?」
「そうだっけ~?」



ディオンとは、あの日から一度も顔を合わせていない。

明日から冬休みだからしばらく会う事はないけど、次に会ったら私はどんな顔をしたらいいんだろうか。



目をつむって、あの後した話の内容を思い出していく――
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