【講談社大賞受賞作品】私を殺したのは、大魔法使い様ですか?

花澄そう

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ついに進級試験

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…………

……

「シエルゥゥーー!!」
親友のメイがFクラスの教室に飛んで入って来たと思うと、そのままの勢いで私に抱き着いてきた。

「うわっ」

「凄いじゃん!飛び級を出すなんて!」
その言葉に、もう上級クラス棟にまでうさわが回ったんだと知る。
まだ試験が終わって1時間も経ってないのに、なんて速さなんだろうか。

「本当におめでとう!」
「ありがとう。で、メイは……どうだった?」

メイはこんな感じでサバサバとして悩みも少なそうに見えるけど、実は意外と繊細な心を持っている。
そのせいで、試験当日はお腹を壊したり高熱が出た事があって、試験に出ても実力発揮できない事が多かったけど……

「ふふっ」
メイの笑い声が耳をかすめる。
抱きついていたメイが、私の肩に手を置いて身を引きがす。


すると、メイは綺麗な白い歯を見せて言った。
「合格したよ」と。

私はその言葉を聞いた瞬間、ぶわっと喜びがあふれて来て思いっきり抱きついた。
「よかった~!おめでとう!」

本当に良かった……。

「ありがとう~。でも、今回私が進級しなかったらシエルと久しぶりに同じクラスだったのにな~」
「え?あ、ほんとだね」
私はDクラスで、メイがCクラスになるんだもんね、と考えながら私は続けた。

「メイの合格はすっごく嬉しいけど、一緒のクラスになりたかったな」
メイとはIクラスとHクラスでしか一緒になっていない。
それ以降はずっとバラバラだ。私が進級できなかったせいで。

「じゃあさ、次の試験でシエルがもう1回飛び級出したらいいじゃん。私も合格前提だけど」
ふふっと笑うメイに「さすがに無理でしょ。今回はたまたま起きた奇跡だよ」と困ったように返した。


「クラスは違うけど、来年からは同じ棟だね」
「ん?」
「ほら、SクラスからDクラスが上級クラス棟、それ以下がこの下級クラス棟だし」
「あっ!そっか!次Dクラスだから私、上級クラス棟に行くんだ!」

信じられない。
上級クラス棟なんて、まだまだ先だと思っていたのに。


上級クラス棟と下級クラス棟は廊下を見ただけでも全然雰囲気が違う。

下級クラス棟は、小学校みたいに丸めたノートを野球のバッド替わりにして遊びぶ子供が居たりして、常に誰かが走り回っている状態だ。

それに対し……上級クラス棟は落ち着いた雰囲気。単純に年齢層が違うからそうなるんだろうけど。


「下級棟と上級棟の間に多目的室棟や講師棟が挟まってて、こっちまで来るのに地味に距離あったんだよね~。だからクラスは違っても近くなった分、会いやすくなるね」
「そうだね!」
メイと近くなるの楽しみだな。

「なぁ。俺にもおめでとうって言ってや~、メイちゃん」
その声に振り返ったメイは、かすかに目が大きくなった。
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