【講談社大賞受賞作品】私を殺したのは、大魔法使い様ですか?

花澄そう

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ついに進級試験

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試験場は、魔法壁のある訓練所に似ている。
訓練所と違うところはというと、訓練所よりも広くて壁が透明じゃないところだと思う。

「Fクラス、タチバナ・シエルさんですね」
長い机の奥に学園長、副学園長と教頭の3人が横並びで座っている。

「はい」
元気よく返事をしてから気付いた。声が緊張でうわずっていると。
しかも足もかすかに震えている。
寝不足だし、こんな状態で本当に進級できるのか、と不安に飲まれそうになる。


でも――頑張れ、私!
私は数百年に1度しか現れないと言われる『魔力の覚醒』をした魔法使いなのよ!アランもだけど。

そんな私がFクラスからEクラスに上がれないわけがない!
しかも、今まで人よりたくさん勉強をしてきたんだし(知識は偏り気味だけど)。

だから合格出来ないはずは、無い!


1年でも早くここを卒業して、大魔法使いを探す旅に出るか、魔法研究員になって世界線を超える方法を発見するのよ!


「準備はいいかな?」

「はい」

…………

……

「ほ……ほんとですか?」
「はい……信じられない事ですが」

信じられない気持ちで、目をこれでもかという位に見開くと、追撃のように言われる。


学園長は、机に両肘りょうひじをついたまま指をクロスにすると、ニコっと目を細めた。

「はい。Fクラス、タチバナ・シエルさんはEクラスを飛ばし、Dクラスに進級してください。おめでとう」

う……嘘……。

本当に、この私が――
飛び級!?

「いや~何10年ぶりですかねぇ~、飛び級が出たのは」
「久しく出ましたな」
「全くです」
と、審査員の3人が話している中、私は放心状態になる。


今まで散々、ミジンコ級魔力だとか、最弱魔法使いだとか言われて馬鹿にされてきた、この私が?

信じられないけど、なんと私は、数十年ぶりの飛び級を達成したようだ。




ヒャーー!!
心の中の私が喜びで叫んだ。
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