【講談社大賞受賞作品】私を殺したのは、大魔法使い様ですか?

花澄そう

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進級試験前

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ディオンは私に向けていた指先を、すっと自分の方に向けてジッと見た。

「チェーンを少し触っただけだけど……」
ディオンのビー玉みたいな碧い目が動いて、今度は私の首元あたりに目を向けてくる。

そして静かに眉をしかめてから口を開いた。

「そこから……『やみ』の匂いがした」
「……え……っ?」

闇って……何?
なんか悪い感じのイメージしかないんだけど……。

「闇?」
「闇魔法だよ。あー……、学園じゃ習わねぇんだっけな。俺も卒業してから知ったんだっけ」

ディオンもここの学生だったんだ。
って、魔法使いなんだから当たり前なんだけど、なんか想像できないし変な感じがする。
ディオンはどんな学生だったんだろう。


「闇魔法っていうのは、禁忌きんき魔法だ」
「えっ……」

禁忌……!?
お父さんがくれた、このネックレスが!?

「まさか……そんな冗談……」
「こんな冗談言うかよ」
「えっ……じゃあ、ディオンはこれが、その闇魔法で作られた物だって言うの?」
ネックレスを握る手が小さく震え出す。

完全にディオンの勘違いだわ。間違いに決まってる。
そう思うのに、どうしてこんなに胸がザワつくんだろう。

「さっきからそう言ってんだろ。でも、一瞬だったから確信は無い。だから調べてやるから貸せって言ってんだ」
「待って、その前に、なんで?……どうして闇魔法は禁忌なの?」
私の質問に、ディオンはじっと鋭い目で見据え来てから口を開けた。

「……人の魂を代償にしてでしか、使えない魔法だからだ」


その言葉に全身が一気に寒くなって、そっと二の腕をさすった。

「魔法を使う時、自然界の力を借りるというのは習ってるな?」
ディオンの言葉に静かにうなずく。

「闇魔法はその力のみなもとを、自然界ではなくに置き換えて行う」


それって――

人殺しってこと!?


「闇魔法は、誰かの命を犠牲にしてでしか使えない。だから闇魔法はこの国だけじゃなく、世界的にも禁忌とされている。……でも、例外を作って国の中枢の奴らは使う事もあるんだけどな」

「例外?なんで?人の命が犠牲になるのに」
「大義名分らしい?他に代わりになる魔法もないから、事情は分からなくもないんだけど……」
理解ができずに、眉が寄ってしまう。

「大義……名分?」

「あぁー。なんか説明ばっかで面倒くさくなって来た。もう十分だろ。闇の話はもう終わりだ。とりあえず調べるから貸せ」
「え!?ここで終わり!?教えるなら最後までちゃんと教えてよ!授業の時はちゃんと教えてくれるのに!」

私の言葉に、どこかを遠い目で耳をほじくるディオン。
「ちょっと!聞いてるの!?」
「めんどくせぇんだよ。お前質問ばっかで。それに今は時間外だ」

「うっ……」
そうなの!?私そんなに質問ばっかしてる?

「だって……気になるじゃない……」
私にとって、重要な内容なんだから。

「じゃあ、教えたらお前は俺に何してくれんの?」
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