【講談社大賞受賞作品】私を殺したのは、大魔法使い様ですか?

花澄そう

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進級試験前

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容赦ようしゃなく私の口内に割って入って来る侵入者を、舌で押し返そうとするけど、相手の方が1枚も2枚も上手で追い出すどころか逆にからんでしまう。

「んっ……」
厚い胸板を押しのけるようにグッと押してもビクともしなくて、頭が混乱してしまう。


「んんっ!」
何をしても止めようとしないディオンを、今度はポカポカと叩く。
すると手首を中心に、掴まれたような圧迫感を感じた。

直後、後ろ側に向かって倒れるような感覚がする。
すぐに背中に柔らかな何かが当たっていて、スプリングがきしむような音が聞こえた。


「んっ」
体にのしかかるような重みを感じる。


ちょっと……待って。
まさかこの状況って……
いや、ディオンに限ってそんな事……。そういうの興味無さそうだし。

でも、今、私……
キスされながらソファに押し倒されてる……!?


ディオンから顔を背けるように、思いっきり顔を横に振って、解放されたばかりの口を開く。
「ディオン、待って……私っ」


その時、首筋をすっとでられた感覚に体が勝手に跳ねて、同時に変な声が出た。
「あっ……」


いつもなら、そんな所を触られるとアハハと笑いそうなのに、さっきの自分の声はおかしな程に上ずっていた。
あんな自分の声、聞いた事ない。

なんか変。
真っ暗で、体の感覚が酷く敏感になっているような感じがする。

「んっ……やめ……」
羞恥心を感じて更に熱が上がる。


どうにかなってしまいそうな私の耳に、かすかにフッと笑うような声が入って来た。

くすぐったいはずなのに、そうじゃないような不思議な感覚が走る。
撫で上げられるたびに、体が逐一ちくいち変な反応を示してしまう。

「やっ、やだ……」
何、これ。怖い……

首元から滑り入ってくる手の感覚にドキっとする。
いつの間にかローブもがされていると気付いた私の耳に、胸元でプチプチっとシャツのボタンを取るような音が飛び込んで来る。

「ディ、ディオン!止めてよ。なんでこんな事するの!?」
「なんでか自分で考えろ。ってかこれ邪魔だ」
ディオンを止めようとしていた手は、突然ペチっと叩かれる。

すると、私の両手は自分の意志に関係なく自分の頭上に上がって行った。

「え、なな何!?」

いつの間にか万歳ばんざい状態になった私の両手に、今度は何かで束ねられるような感覚が伝わった。

「やだ……何これ……」
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