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進級試験前
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しおりを挟むその目はとても熱を帯びていて、まるで獲物を捕まえる寸前の――
猛獣のような目に見えた。
ディオンの言った台詞の意味は全く理解出来なかった。
でも、体が勝手に危機感を覚えて一歩だけ後ずさっていた。
「な、何?」
すると、まるで私を逃がさないと言わんばかりの手が、私の後頭部と腰に回って来た。
「え……」
次の瞬間――
私の唇に柔らかな感触が伝わった。
何が起こっているのか分からない私の瞳には、切れ長の目が映り込む。
驚きで息を呑むと、まるで世界が一瞬止まったように感じた。
今の状況を理解した瞬間、瞼が最大限に持ち上がった。
えっ……?
なんで?
心臓がバクバクと脈打つ。
頭が真っ白になり、混乱する思考を整理する暇もなく、ディオンの唇がゆっくりと離れた。
唇が離れた瞬間、再び息をすることを思い出し、深く息を吸い込む。
ディオンに見つめられ、頬が熱くなる。
「なん……」
私が言いかけた言葉は、首を傾げたディオンが遮った。
「目ぇ開けてる派?」
何でも見透かしたような目でよく分からない質問を投げられた直後、私の視界は瞼に触れてきたディオンの手によって暗闇に変えられた。
視界が閉ざされた真っ暗な世界で、再び先ほどと同じ柔らかい感覚が唇に当たった。
そして今度は、自分の唇と唇の間から湿度が高くて柔らかい何かが侵入して来た。
唇をこじ開けてくるその何かに、心臓が更に早くなって行く。
「……んん!?」
まさか、これって……
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