【講談社大賞受賞作品】私を殺したのは、大魔法使い様ですか?

花澄そう

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進級試験前

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なんだか凄く眠そうだわ。

もしかして、昨日の私のせいであんまり眠れてない?

「……ウザい奴がいる」
ディオンがポツリと呟いた言葉に驚いてしまう。

「えっ!?」
私の声を聞いて、半分しか開いていなかった目が完全に開いた。

「ん?あれ……本物か……?」
寝ぼけた様子で目を擦るディオンはどこか可愛く見える。

「え?何?夢だと思ったの?」
ディオンの発言にふと笑みをこぼすと、口を歪めて一気に機嫌が悪くなったのが分かった。

「……なんでお前がここに居んだよ」
「昨日のお礼が言いたくて……って、いたら駄目なの?
あ、そうだ!今日、廊下でディオンを見つけて声かけたのに無視したでしょ!」


「知らねぇよ」
「嘘!だって目が合ったじゃん!」
「気のせいだろ?」
そう言いながらグルリと背中を向けられて、淋しさが湧く。

ん?なんか……今日のディオン、冷たい?

もしかして昨日、途中から何も覚えてないけど展望台で私がいらぬ事を言ってしまったのでは……

そんな予感に、心の波が乱れる。


「なぁ」
背中越しに飛んで来た言葉に「何?」と返す。

「お前、時の記憶って、あるか?」
「え……?ないけど」
あれ?昨日、自分で帰ったんじゃなかったんだ。
なんで私、そんな事まで忘れてるんだろう?

「そうか」
「何?」
「もういい、出てけ」
「え?なんで」
「寝るんだよ!横でギャーギャー騒がれたら寝れねぇだろうが!気の利かねぇ奴だな」
「うっ……」

ム、ムカつく!!
そんな言い方しなくていいのに!

でも……眠いのはきっと私のせいだもんね。
「分かった。でも1つだけ教えて」


「んだよ」
背中越しに鬱陶うっとうしそうに言われて、胸がギュっと痛くなる。

「昨日、途中から……あんまり記憶が無いんだけど、私、何か言ったの?」

「別に。途中からお前ほとんど寝てたし」
「そっか……私、寝て……」

……ん?んん!?
ね、寝てた?

「……えっ!?」
まままま、待って!?

ディオンが部屋に連れて帰ったのに、私が寝てた!?

起きたら普通にパジャマ着てたんだけど!?
それって、それって…………どういう事ーー!?


途中で起きて自分で寝ぼけながら着替えた!?そんな事ある!?絶対ないよね!

ああーー!
聞きたい!!
けど、そんな事を聞いたら、自信過剰だとか貧相な体のくせにとか言われて馬鹿にされそうで聞けない!
私はどうしたらーー!


良からぬ想像に、脳内の私が頭を抱えて空に叫んでいると、ディオンは白銀の髪をかきあげながら起き上がった。
その行動に不思議な気持ちで見ていると、そのままソファから立ち上がった。

「あれ、どこ行くの?」
今さっき寝るって言ってたのに。

「どこか」
「え?」

ここから立ち去ろうとするディオンを、シャツ掴んで引き止める。
「待って」
「んだよ」

ディオンは、ずっと私に背を向けたまま。

やっぱり……避けられる。
私、絶対何かしたんだ。


「そんな言えないような酷い事を言ったの?」
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