【講談社大賞受賞作品】私を殺したのは、大魔法使い様ですか?

花澄そう

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魔法会

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お願い。

輝く……
世界で一番輝く宝石になって。

そうイメージして手の先に魔力を込める。
すると、目の前の黒っぽい石はすぐにポウっと光を放ち始めた。

土が洗い流されるように机の上にボロボロと落ちていく。
そして黒っぽかったかたまりが、徐々にガラスのような透明感を持っていく。
それはまるで黒い部分を浸食するかのよう。

隅々まで浸食が終わり、光りが完全に消えると、ダイヤモンドのような形をした石が姿を現した。

でも、石の中には金色に輝く針のようなものがいくつか入っている。

「出来……た……?」


す……凄い。
魔力増幅のバンドは付けてるけど、魔法でこんな物が作れてしまうなんて。

驚いている中、「やった!」という大きな声に目を向ける。
すると、そこにはIあいクラスの子供が、直径20cmくらいはありそうな真っ赤な宝石を手に、喜び跳ねていた。

凄っ……と思っていると、今度はすぐ隣から悔しむ声が聞こえてくる。

「あぁ~……」
その声に誘われ目を向けると、隣のEクラスの女の子がガックリとうなだれていた。
台の上には、土がついたまま何も変わってない石があった。

気になって他のクラスの物にも目を向けると、半分だけ宝石のようなものに変わった中途半端な物が目に入って来た。


「終了ーー!!これから審査を始めます。皆さん、一歩下がって手を後ろで組んでください」

公平に審査が行われるように、審査員は講師ではなく管理事務局の人間がする。
円に並んでいる机の中心に、空から審査員が飛んできた。

と思うと
「あ、クリフおじさん」
なんと、審査員はクリフおじさんだった。

「お、シエルちゃん」
そう言うとチラっと私の台にある石を見ると静かに眉を上げた。
そしてグルっと一周見回した後に言った。

「最近頑張ってるな」

その発言を聞いて、なんとなく自分は優勝ではない気がした。

私もグルリとみんなの前に置かれている石を確認する。
すると、すぐに向かい側のSクラスの生徒の石に目が止まった。


Sクラス生の前には、透明感がとても高く、光り輝くダイヤモンドのようなものがあった。

一方自分の出した石に目をやると、確かに凄く輝いてはいるけど……
輝きというには透明感が少し足りない気がした。

その瞬間から、優勝するかもしれないと思っていた自信が、砂山が風で吹き飛ばされるように消えていった。


「じゃあ、Iクラスから見ていくな」
そう言って、1番下のクラスから順に見ていくクリフおじさん。

順番はあっという間に自分の番まで回って来て、石を軽く持ち上げてから「やるじゃん」と一言言われるも、すぐに次に行かれた。

やっぱり……優勝じゃない。

優勝はきっと……


Sクラスまで見終えたクリフおじさんは、咳払いをしてから「結果を発表します」と言う。

私は、奇跡が起こって欲しい気持ちで、両手を握りしめてギュッと目を閉じた。
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