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転校生
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しおりを挟むそんな中、ディオンは手を天井にすっと上げてからアランに指の先を向けた。
その事にギョっとして慌てて止めようと席を立ち上がった私は、上げたばかりのディオンの腕を掴んで引き止める。
「ま、待って!」
ほんの一瞬だけ驚いた顔を見せたディオンは、すぐに私を冷たく見下ろす。
「離せ」
「無理!だって、今離したらアランがっ!」
「こいつがなんだってんだよ」
「アランは私の大事なクラスメイトなんだよ。だからこんな事冗談でも止めてよ!」
「はぁ?冗談なわけないだろが、馬鹿か」
「冗談じゃないのなら余計に離せない!」
私の言葉を聞いた瞬間、ディオンは私を払いのけた。
勢いあまってその場で倒れこむ私に、ディオンは
「色気づいてこんな場所で気色の悪い事を言ってる奴が大事なクラスメイトだ?笑わせんな」と吐き捨てるように言う。
「……そ、それは……」
確かに、教室であんな事を言うのはあまり褒められた事ではないと思う。
でも、だからってこんな事するなんて絶対おかしい。
私を払いのけた手は、尻もちをついているアランを差す。
「あっ……」
辺りに渦巻いていた黒い空気は、ディオンの指先に一点集中したように纏う。
初めて見る、ドス黒い靄の玉にゾッとして体が固まってしまう。
「ディ……ディオン、やっ止めて!お願い!」
小さな玉のような靄が、すぐにアランごと包んで消し去りそうな程の大きさ膨れ上がったと思うと、初めて私でも分かるほどの魔力を肌で感じた。
肌が毛羽立つような感覚がビリビリと伝わってくる。
これが魔力を感じるという事なんだろう。
「ディオン!確かにアランの言葉遣いは講師に対する言葉遣いじゃなかったかもしれないし、自習もせずに色気……づいてたのかもしれないけど、だからってこんな事するなんて絶対おかしいよ!」
酷く冷たい横顔に叫んでみるけど、なんの反応もない。
ディオンは私の言葉を完全に無視しているようだった。
ディオンの中では、これはただの脅しなのかもしれない。
でも脅しじゃなかったら……本当に冗談じゃないのなら、アランが大変な事になる。
それに、ディオン自身も塔に入れられて酷い拷問を受けることになるだろう。
そんなの絶対に嫌だ。
それに、私はディオンにこんな事をさせたくないし、そんな場面を見たくない。
ディオンに、人を傷つける行為をしてほしくない。
そう思ってしまうのは、きっと、短期間のうちに私はディオンに情が湧いてしまったからだろう。
「ディオン!止めて!人殺しなんかにならないで!」
その時、何を言っても無関心だったディオンが一瞬ビクっと動いた。
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