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転校生
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しおりを挟むひぃ。
「絶対止めて!」
「えー。まぁでも、かわいそうやから今はこのへんにしといたる」
「一生でお願いします!そしてもう自習に戻るから喋りかけないで!」
そう言って机の上で開けたままの教科書に向き合ってページをめくろうとすると、包み込むようにその手はすくわれる。
手を辿るようにしてアランを見ると、天使のような顔を向けられていた。
「なぁ、シエルちゃんって付き合ってる奴とかいるん?」
ディオンーー!早く来て!
会議なんて抜け出していいから!今すぐ!
ああ、今ばかりはディオンが恋しい!!
「い、いないよ」
ああ、押しに弱い自分が嫌になる。
「じゃあ元カレとかは?」
「いないけど……」
「へー。意外。一人もおらんの?」
告白された事は何度かはあるけど……。それもきっとからかわれて。
「うん……意外?」
「うん。意外やわ。そんな可愛いんやから彼氏の一人や二人でもいそうやん」
またこの人は……。
そんなカッコイイ顔でサラっとそんな事を言われて、照れない人なんてこの世にいるのだろうか。
「もう。お世辞はやめて」
困る。照れたくないのに照れちゃうのが本当に嫌だし。
アランのこういう所が特に苦手だ。
「俺お世辞なんて言わへんし」
「もういいから」
「シエルちゃん、また嘘やと思ってるやろ?見た目もやけど、そうやってすぐ照れる所も、頼まれると断れない所も……しっかりしてそうで意外とドジな所も、芯がしっかりしてそうなところも本気で可愛いって思ってんねんけど」
その言葉に恥ずかしくなって、頬を手で覆う。
「好きな奴はいんの?」
「い……いないけど……」
「ふぅん。じゃあ気になる奴は?」
「えっ……、気になる……人……?」
そう聞かれた瞬間、頭上にポンと浮かび上がるディオンの顔。
ぎゃーーー!なんで、どうしてここでディオンの顔が!!
慌てて手で顔をかき消す。
「い、い、いないよ!」
「んん?なんや、今メッチャ怪しいんやけど?」
眉を上げ、見透かすような目で覗き込まれてギクりとする。
なぜか早くなってしまった心臓に、今度は大きく目を逸らしてしまう。
「でも俺、そんな『気になる程度の奴』なんて頭からスッキリサッパリと消してやるわ」
「消すって?」
突然、伸びて来た手が私の顎をすくうと、アランの方に向き直される。
目の前に自信に満ち溢れているような顔が見えて、思わずドキッとしてしまう。
「シエルちゃんの頭の中、俺でい~~ぱいにしてやる」
そんな台詞を甘い声で囁かれて、体温が上がった気がした。
「……は、離して。ほんと適当な事ばっかり言って……」
そう言って顎にある手を掴んで離す。
「適当ちゃうって。何回言ったら分かってくれるん?ってかハッキリ言わな分からん感じ?」
「ハッキリって?」
「俺が、めちゃくちゃシエルちゃんに惚れてるって事や」
「えっ」
絶対嘘って思うのに……、真剣な目にそれ以上は否定できなくて、心臓が早鐘を打ち始めた。
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