【講談社大賞受賞作品】私を殺したのは、大魔法使い様ですか?

花澄そう

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転校生

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と言われて少し考える。

「今は……確かに怖くはないかも?」
苦手だし、多少の警戒はまだしてるけど。

「ディオンはウサギの時の方が良かったっていうの?」
私の質問に、ディオンは黙って宙に視線を泳がせた後、プッと噴き出した。




「あ!今、絶対私の事で笑ったよね!?」
立ち上がってディオンを指をさすと、その指はクルリと自分の顔に向いて、そのままほほをブスリと突いた。

「イタタっ!爪!爪が刺さってるから!」
「俺に指差すな」

やっと指が離れて、ポケットから手鏡を出すと頬にクッキリと爪痕が……
「もう!ディオン!また人の体を勝手に動かして!こういうの止めてって言ってるじゃん!人でなし講師!」
「あぁ?お前、俺にそういう言い方していいのか?」

あごを上げてサラリと白銀の髪を揺らすとあおい瞳がビー玉のように輝く。
俺様的な言い方に、小さなイラつきを覚える。

「そんな態度なら魔法会の時、魔書資料室に入れてやんねぇからな」
そして、主導権握ってるみたいな態度もムカつく。
出してくれる玉子サンドは神味だけど!

「こっちだって!そんな態度なら学園に色々とバラすからね!」
と言って主導権を取り返した気分でいると、思いのほかククっと笑われる。

「な……何よ!?」
クスクスと笑う端正な顔は、少し歪んでいる。

「馬鹿だろ、お前」
「へ?なにが」
「まさか、そんなので俺の弱みを握ったつもりになってたのか?」
「えっ、だって……」
だから資料室に入れてくれるんでしょ?

「んなの気にするわけないだろ」
「き、気にするでしょ!私がバラしたら講師生命が無くなるんだから!」

「はー。やっぱお前、面白おもしれぇ」
そう言うと、今度は馬鹿にするようにハハっと笑った。



「そんなの、俺にとって脅威きょういでもなんでねぇよ。どうせ俺が手を下したらいくらでも簡単に操作できるんだし」

そう言ったディオンの目は、さっきとは打って変わって酷く冷めきっていて、全身が一瞬で冷えていく感じがした。

最近のディオンは怖くなかった。
でも人を人と思ってなさそうなこの冷めた目を見ると、前まで感じていた恐怖が簡単によみがえって来た。


「じゃあ……なんで私を魔書資料室に入れてくれるの?」
恐る恐る聞くと無言のままジッと見られる。

切れ長の綺麗な目が真っすぐ向いていて、思わず目をらしたくなるけど我慢する。
いま目を逸らしたら負けた気がするから。

まるで我慢大会のような気持ちで見返していると、ディオンは長いまつ毛をバサっと動かして口を開いた。
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