【講談社大賞受賞作品】私を殺したのは、大魔法使い様ですか?

花澄そう

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転校生

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そう聞くと、まさかのため息がつかれて悩まし気にひたいに手を当てた。

「もしかして頭痛いんですか?なんか顔色良くないですし、私でよかったら一緒に保健室に……」
「大丈夫だよ。そういうのじゃないんだ」
「そうなんですか……。じゃあ、どうしたんですか?」
こんなローレン、友人として凄く心配になる。

「シエルちゃん……」
そして何かを訴えるような目が向く。本当に顔色が悪い。

「やっぱり保健室行きしょう。一回診てもら……」
「違うんだ!そうじゃない!」
強く言われた事に驚き固まってしまうと、独り言のようにローレン呟く。


「……あいつ、僕のシエ……」
直後、突然我に返ったような目をしてバッと口を塞ぐローレンに、頭の上にハテナマークを浮かべる。

「えっ……?」
今、僕のシエルちゃんって言いかけた?
いや、そんな訳ないか。酷い聞き間違いだ。

「……ご、ごめん!もう行くよ」
座ったばかりの席から慌てて立ち上がるローレンを驚き見上げる。
ローレンは行くと言ったのに、なぜか私の後ろに回った。

「でも、これだけはさせて」
「え?これって?」

私の質問の返事が来る前に、ローレンは私の肩にすっと手かざして来た。
すると、その手からポウっと白い光が見えて頭の上にハテナマークが増えていく。

「ローレン、何してるんですか?」
動いていいのか分からなくてジッとしていると、目の端で光が消えたのが分かった。

「…………祈願きがん?的なもの、かな」
すると今度は頭上でふわりと優しい光が舞っているのが自分の前髪の隙間から見えた。

「祈願?」

意味も分からずにされるがままの私は、「よく分からないんですけど、体調悪そうですし、魔法は使わないほうがいいですよ」と言った。
するとローレンは、「僕は大丈夫だよ。それに、こうしないと余計に悪くなりそうだから……」と謎めいた言葉を落としてきた。


ローレンが立ち去った後、すぐにメイに言われる。

「やっぱあんた、すっごくサオトメ様に愛されてるわねー。羨ましいわ」
「またメイはそんな事言う!本当に止めてよ!そんな訳ないって言ってるじゃん!」
と口を尖らせると、隣のルイーゼが「鈍感って罪ですね」と独り言のように呟いて食後のオレンジジュースを飲み干した。



…………

……

「次、移動教室やっけ?」
振り返り聞いてくるのは前の席のアラン。

今日もゴツいアクセサリーのオンパレードだ。
これが私物じゃなく、学園内のお店で売られているというから驚きだ。


「そうですよ」
「あっ。でも俺、このあと管理事務局行かなアカンねやったわ」
「そうなんですか?次、アランが楽しにみしていた特別講師の授業なのに」
「うわー、めっちゃ残念や!なんかなぁ、魔力の状態をもう一回見させて欲しいとか言われてなぁ……って、同級生やねんから敬語は無しでって言ってるのに!いつになったらため口使ってくれるんや」

「でも……」
「なんか敬語使われると、分厚い壁があるみたいで悲しくなるやん」
悲し気な瞳に罪悪感に見舞われてしまう。

「……分かった。敬語は止める」
そう言うと、今度は歯を出して子供みたいに笑った。
「やった」

チャラいし、女慣れも凄いし、距離感だってヤバイし……なのに凄いイケメンで、甘え上手な年上。

やっぱこの人、なんとなく苦手だな。

「ん?なんやこの肩と頭にあるやつ」
突然、アランは何かに気付いたように、私の肩と頭を交互に指さしてきた。

「え?何か付いてる?」
と言いながら指を差された肩を見てみたけど、何も付いているようには見えない。
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