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転校生

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「あの子がタチバナさん。あなたと同じ魔力の覚醒者で一番年も近いわ」

うー……なんで。
なんかこの人苦手な感じがするのよね。見た目だって超派手だし。

良い人そうではあるけど距離感は完全におかしいし。なのに押しが強いそうだし……。これが私の勝手な思い込みだったらごめんなさい。

「タチバナさん、確か16歳だったわよね?」
「はい。そうです」
恥ずかしながら16歳でFクラスです。しかも来月で17歳。

「仲良くしてあげてね」
「はい……」

私の前まで来たジョウガサキ・アランとかいう人は「よろしく」と言うと、昨日より少しだけシンプルになったピアスが口元で光った。

「よろしく……」

あぁ、嫌な予感しかしない。



昼休みの学食――

あそこだけ物凄い人だかり。
まるでどこかの世界的有名人が来日したかのようだ。

人に囲まれすぎて見えないけど、あの中心には転校生のジョウガサキ・アランがいるらしい。

派手で、オラオラに見えるのに意外と気さくであの顔。
そして今いる全生徒の中で唯一外の世界を知ってる人。
外はどんな世界なのかとか、どういう生活をしているのかとかを根掘り葉掘り聞かれているっぽい。
そら引っ張りだこになるよね。


「転校生、本当に凄い人気だね」
向かい側に座るメイが言うと、隣に座っているIQ130の同じクラスの委員長、ルイーゼがしっとりとした声で言う。
「シエルちゃんに続いて連続で覚醒なんて、奇跡きせき続きね」

「ねぇ。でも不思議なんだけど、なんで彼はFクラスからなの?」
私の質問に、ルイーゼはかすかに片眉を上げた。


「シエルちゃんは、本当に自分の興味ある事以外は全く覚えてないよね。まぁいつものことだけど」
ため息まじりに図星を言われて、頭をかいて苦笑いを返す。

「前に習ったでしょ?10歳以上で魔力の覚醒が起きてこの学園に入学する人はIクラス以上からになる事もあるって」
「そんなのあったっけ?」

「一応試験もある。だから必ずFクラスからスタートするわけじゃない。IクラスからFクラスまでで、その人に1番合っているクラスからになるのよ」
「そうなんだ……。なんかズルい」

「え?どうして?」
「だって私、Fクラスになるまでに12年半もかかってるんだよ!!なのに一瞬でFクラスになれるなんて……」

口を膨らませる私に、ルイーゼが説明をする。

「下級クラスであるEクラスまでの授業は、国語や数学、道徳や国の歴史等、人間として生きるための最低限の教養をメインにしている。教養は学園外にある学校で習うのと同じだから、入園テストで教養のレベルをみて、優秀な成績を納めたらFクラスからスタートになる。だから何もズルくないよ。学園外で勉強していたのか、学園内で勉強していたのかの差よ」

ルイーゼの説明を聞くと確かに何もズルくない気がしてくるのに、頭の中でやっぱり納得がいかないのは何故だろう。

じゃあFクラスまでは魔力のテストは無しにしてよ、と思ってしまうのはおかしいんだろうか?


この世界独特の法律とかは1からだったけど、教養や勉強の基礎に関してなら前世の記憶がある分、最初から有利だったはずなのにFクラスになるまでに12年半もかかった。
だから、なんだかその話に矛盾がある気がして納得いかない。

それに、どうせ覚醒するなら私もずっと魔力無しで10歳以降に覚醒したかった。
そしたら両親とも沢山一緒に居れたのに……。


と思ってパスタを口に放り込むと、向かい側に座るメイが突然口をあんぐり開けて目を見開いた。

その顔は真っ赤に染まっていき、一体何を見ているのかと思ってメイの視線の先を見ようとした瞬間、両肩にズンっと何かが乗ったような掴まれたような感覚走る。
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