【講談社大賞受賞作品】私を殺したのは、大魔法使い様ですか？

転校生

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「えぇ～？見てへんで」
「そうですか。ありがとうございました」
そう言って掴まれてる手を外してから頭を下げ、謝りながらその場を後にした。

すると、背後から謎の会話が聞こえて来た。


「おい、勝手に違う所行くんじゃない」
「え？トイレ探してただけですってぇ」
「ああー、そうか。それは仕方ないな。それにしても君は私物が多いな。ある程度置いて来た方が良かったな。まぁ、すぐに全部回収して家に送るからな」

私物……？

そんな謎の多い会話があまりにも気になって走りながら振り返ると、管理事務員のクリフオジサンと、さっきの男子が廊下で話している様子が映った。


結局、あの後、いくら探しても黒髪の人は見つからなかった。
まるで神隠しのようだと思った。



翌日――

本当に一瞬しか見えなかったし、後ろ姿しか見えなかった。

それに殺された時と同様に、顔は見えなかった。

なのに直観的に昨日見た人物が私を殺した犯人だと思ってしまうのは、なんでだろうか？


前世と今世では確実に生きてる場所が違う。
ここは、私が殺された場所とは全く別の世界。

普通に考えたら髪型と背格好が同じだけの……他人の空似でしかないはずなのに……

ん？
今思うと、髪が長いから女性だと思い込んでいたけど、昨日のイメージはかなり最後の記憶に近かった。
って事は……もしかして髪の長い男の人かもしれない？

昨日見た人は180cmくらいはありそうだったもんね。

前世で髪の長い男性……
うーん。そんな人が知り合いに居たら絶対に忘れるわけが無いと思う。
なのに、殺した奴の発言からすると、やっぱり私を殺したそうに感じた。



この学園に約13年間くらい居るけど、あんな姿は一度だって見た事がない。

私服だったし、また新しい特別講師とかなんだろうか？
もし国の関係者だったら一時的な出入りだろうから、もう会えない可能性が高いかもしれない。

「はぁ～……」
後悔しても仕方ないけど、やっぱり昨日、すぐに追えなかった事を悔やんでしまう。

私服と言えば、昨日の私物を持っていた派手な人はなんだったんだろう？


そんな事を考えていると、教室の扉が開く音が耳に飛び込んできて、すぐに現実に引き戻された。

「皆さん、おはようございます」
ワントーン高い声が教室の端まで響くと、胸の開いたシャツを着ているFクラス講師が顔を出し、カツカツとヒール音を立てて教卓前まで移動した。

もう今となっては、クラス講師がどんな服を着ているかでディオンが来る日か分かってしまう位だ。


「突然ですが、今日は皆さんに驚きのお知らせがあります」