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転校生

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メイが言うような事が本当なら、やっぱりローレンには当てはまらない。


「……メイの話を聞いて確信した。やっぱりローレンはただの友人だって」
「そっか」
「多分私は……メイが言うような気持ちは一生理解出来ないか……も………」


その時、風を切るように私達の前を横切った、上下黒の恰好をした人物に目を奪われた。

それはまるで、強力な磁石で吸い寄せられるようだった。


「……へっ……」

振り返る私の瞳に、クセひとつないつやのある黒髪が腰まで垂れる人物の後ろ姿が鮮明に映りこんだ。


自分の時間がピタリと止まる。

息の仕方を忘れる。


歩くたびに毛先が左右にゆらゆら揺れている様子が、時計の針が壊れたかのようにひどくゆっくりに見えた。



なぜなら、その後ろ姿は――

どっからどう見ても、前世で私を殺した人物にそっくりだったからだ。


今すぐにでも追いかけたいのに、あまりの事に体が放心状態になってしまい、動けない。

私は、なんとか奮い立たすようにしてベンチから立ち上がった。

「えぇ!?あ!……あーあー、クレープ落ちたよ?どうしたの?突然立ち上が……」
そんなメイの声が、とても遠くに聞こえた。


なんとか地面から足を引きはがずようにひざに力を入れ、足が持ち上がった瞬間、「先帰る!」と言って今にも消えそうなその後ろ姿を追った。


「え!?ちょっとシエル!!バッグ……」

…………

……


黒髪の人物が入っていった講師室がある建物に足を踏み入れてから、酷い焦りが湧き上がった。
なぜなら、もうあの姿がどこにも無かったからだ。


いない!!
そんなっ!どこに行ったの!?

分かれ道なんて無かった。少し出遅れたけど、すぐに追いかけた。
なのに……。

ずらりと並ぶ講師室に電気が付いていないことを確認しながら、長い廊下を進んでいく。

すると、奥にある曲がり角から足音が聞こえて来た。


もしかして……っ

ここで逃したら迷宮入りするかもしれないという思いで、曲がり角を目掛けて全力疾走しっそうすると――


「わっ!」
その曲がり角で思いっきり何かとぶつかってしまった。

勢いがよすぎて転びそうになると、「危ないっ」という声と共に、腰を支えられるような感覚が走った。

閉じてしまった目を開けると、ピントが合わないくらいの距離に、真っ黒なシャツが映ってドキっと心臓が跳ねる。
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