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転校生

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「ちょっとでも好きなんだったら早くしないと、すぐに遠距離恋愛とか、そういうレベルじゃなくなっちゃうじゃん。だから実は結構心配してたんだよ」
メイの言葉がほんの少ししか理解できない私は、半分くらいになったクレープを手に、さらに首をかしげた。

「ほら、いつ飛び級してもおかしくないと言われてるサオトメ様だし?来月ある進級試験でついに飛び級を出すかもしんないじゃん」
「うん。そうだね」
「そしたらあと1年ちょっとで卒業だよ?卒業したら何年も……いや、下手したら何十年も会えなくなっちゃうんだよ!?だから、もし両想いならって思って……」

そこまで言われて、やっとメイの言いたかった事を理解した。


卒業するまでは学園から出る事も、学園外の人と会う事さえ出来ない学園の厳しい規則。
森のような場所に学園があるのに、どこまでも続きそうな壁に囲まれている。
しかもあの壁には全て完璧なセキュリティが施されているよう。

唯一この学校から外が見えるのは、開門された時に見える道路と、見張り台みたいな展望台から見える高い建物の先端くらい。

だから卒業してしまったら、会う事も、顔を見る事さえもほぼ不可能になる。


その時、ふと思い出した。
ローレンがここの講師になりたいと言っていた話を。
でも、勝手に言わない方がいいと思って口にはしなかった。

でももし、ローレンが心変わりして講師にならなかったら、卒業後は何十年、下手したら一生会えなくなるんだろう。

そんなの……淋しい。

でも、この淋しさはメイと会えなくなるのと変わらない気がする。いや、下手したらメイと会えなくなる方が淋しいかも。


……『好き』、か。
なんか難しいな。


前世は生きていく事だけで精一杯で、何もかも余裕なんて無かった。
婚約者にも恋愛感情は無かったし、お互い幸せを願っての契約婚のようだった。


今は時間的には余裕があるけど……
やっぱり、どの世界もみんな当たり前みたいに恋愛をしているのに、私は未だにその感情が分からない。


「恋愛感情の『好き』って……なんだろう。
普通の『好き』と何が違うのかな……」

薄い雲が張り付いている高い空に向かって独り言のように呟いた。


「私はBクラスのケインくんしか付き合った事ないし、本当に好きな人だってシエルが知っての通り、3人くらいしかいなかったから偉そうな事言えないんだけど……」
「うん」

「好きっていうのは、この人とずっと一緒に居たい、そばにいたいって思う事かな?って私は思ってる」

「ずっと、一緒に居たい……そばにいたい……」
「うん。離れる時は本当に名残惜しいし、もっと触れたくなるし、笑顔を見るとギューって胸の奥が熱くなる。……そんな感じ」
胸に手を当て、少し照れながら『好き』を語るメイは、とても可愛い乙女の顔をしていた。
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