【講談社大賞受賞作品】私を殺したのは、大魔法使い様ですか?

花澄そう

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人質に取られたラブ

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すると突然、意味不明に満足気な顔をしたディオンは、私から離れてふわりと宙に浮く。
そして「んっ」と言ってラブをポイっと投げて来た。

「あわわっ!」
上手くキャッチしてから怒鳴るように言う。
「ちょっと!投げないでよ!」

「いちいちうるせぇ」
片耳に指を突っ込んでそっぽ向くディオン。

「煩くもなるわよ!ラブが怪我したらどうするのよ!」



「大丈夫だろ」
「何が大丈夫なのよ。どういう根拠で!?っていうか、追いかけられてるみたいだけど何したのよ」
「なんだよ、今度は、って」

「どうせひどい事でもしたんでしょ」
「前科ありみたいな事言うな。別に何もしてねぇよ」
不満げに口を歪めるディオンの胸を小突くように指先を向ける。

「何もしてないのに追われるわけないじゃない!それに前科なら、ありありでしょ!?私の首を絞めたり、突き落としたりしたんだか……ら……」
その時、廊下から足音が聞こえて来て……ドアがガラガラっと音を立てて開いた。

「上にはいなかったね~。やっぱりカミヅキ講師の魔力はここから感じるんだけどな~」
と言いながら再び入って来たさっきの女子生徒達とバッチリと目が合う。

「あ」
皆の声が重なる。



「カミヅキ講師!やっぱりいたじゃないですか!!隠れるなんて酷いです!」
「チッ、講師の時間はとっくに終わってんだよ」
そう言ってディオンはシュッっと目の前から消えた。

私とSクラスの女子だけになった部屋に静けさが走り、この後ディオンをかくまった事について色々問い詰められるんだろうという不安がよぎったけど……
女生徒達はなぜか私には見向きもしていない様子。

「あぁ……立去る姿まで素敵」
「麗しいわ……」
女生徒たちはディオンが消えた場所に向かって手を合わせ、なにやら目を輝かせている。

「あっ、彼の魔力が講師室の方に移動したかもしれないわ」
「追いましょう!」
「はい!」
そう言って走り去って行く様子に、ぽかんと口が開いて塞がらなくなった。


「追いかけられていたのってまさか……そういう事!?」

そら……息を飲むほどに綺麗だけど……
あんな男のどこがいいの!?


「中身見ようよ、中身を……ね?ラブ」
ふと抱きかかえているラブを見ると、いつもアーモンドみたいな色をしているの毛が、今は夕陽に染まって真っ赤になっていた。

「ふふっ、ラブ真っ赤になってる」
……ん?

んん!?真っ赤……?

って、まさか……

一瞬でさっきのディオンが言った『真っ赤』という言葉がよみがえって来る。


まさか、さっきディオンが言って『真っ赤』って、夕陽に染まって真っ赤だって事じゃ……


「ギャーー!!」
私は頭を抱えて実験室の天井に向かって叫んだ。

お願いします!神様!
今さっき言った、『あんたのせい』という発言を取り消させて下さい!!
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