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Fクラス特別講師
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ただ、言いたくないだけなのに……
「ディ……」
悔しい。なんで私はこんな奴の名前を呼ばされてるの!?
「ディオン……」
言われた通りに呼んだのに、奴は不満そうな顔で見下してくる。
「聞こえねぇよ」
一度名前を口にしてから気付いた。
奴の名前を口にする事は、なぜか不快感よりも恥ずかしさが勝るということに。
こんな事、こいつにバレたら一大事だ。
キモイキモイ言われて馬鹿にされ、一生ネタにされるかもしれない。
「ディオン、ディオン、ディオン、ディオン!はい!!これでいいでしょ!?」
照れ隠しで大きな声で言うと、「煩さい」と言われて再びデコピンをされる。
「痛っ!」
さっきと同じ所にデコピンをされたせいで傷みが倍に感じる。いや、それ以上かも。
言えって言われたから呼んだのに、なんて酷い奴。講師失格よ!
と思って睨むと、奴は、まるで何も無かったかのように私が書いたスケッチをコンコンとノックした。
「で、この生き物はなんだ」
「ライオン……だけど?だってお題がライオンだし」
私の言葉に奴はキョトンとした顔になり、突然大きな手で顔を隠した。
何事かと思っていると、くるりと背を向けて肩を大きく震わせ始める。
ククっという声が聞こえて、初めて笑われてるんだと知った。
そのことに恥ずかしさと苛立ちが同時に湧き上がってきた。
「なっ、なによ」
「はー、まさかとは思って聞いたけど……お前ってクソ程にセンスねぇな」
どう見ても猫だろ、と追撃するように言われて更にカッとなる。
「ま、まだ途中なのよ!集中できないからあっち行って」
絵を隠してカンカンになって怒ると、「集中しても一緒だろ」と言われ、キッと睨みつけた。
「私、こう見えても最近すっごく調子が良くて絶好調なんだから!」
「へぇ。じゃあ見ててやるよ」
「えっ……?見っ……」
「ほら、やれよ。その絶好調とやらを見ててやるからさ」
片方だけ口角を上げた奴は再びクッと笑う。
「え……。いや……それは……ちょっと……」
この後、撃沈したのは言うまでもない。
「ディ……」
悔しい。なんで私はこんな奴の名前を呼ばされてるの!?
「ディオン……」
言われた通りに呼んだのに、奴は不満そうな顔で見下してくる。
「聞こえねぇよ」
一度名前を口にしてから気付いた。
奴の名前を口にする事は、なぜか不快感よりも恥ずかしさが勝るということに。
こんな事、こいつにバレたら一大事だ。
キモイキモイ言われて馬鹿にされ、一生ネタにされるかもしれない。
「ディオン、ディオン、ディオン、ディオン!はい!!これでいいでしょ!?」
照れ隠しで大きな声で言うと、「煩さい」と言われて再びデコピンをされる。
「痛っ!」
さっきと同じ所にデコピンをされたせいで傷みが倍に感じる。いや、それ以上かも。
言えって言われたから呼んだのに、なんて酷い奴。講師失格よ!
と思って睨むと、奴は、まるで何も無かったかのように私が書いたスケッチをコンコンとノックした。
「で、この生き物はなんだ」
「ライオン……だけど?だってお題がライオンだし」
私の言葉に奴はキョトンとした顔になり、突然大きな手で顔を隠した。
何事かと思っていると、くるりと背を向けて肩を大きく震わせ始める。
ククっという声が聞こえて、初めて笑われてるんだと知った。
そのことに恥ずかしさと苛立ちが同時に湧き上がってきた。
「なっ、なによ」
「はー、まさかとは思って聞いたけど……お前ってクソ程にセンスねぇな」
どう見ても猫だろ、と追撃するように言われて更にカッとなる。
「ま、まだ途中なのよ!集中できないからあっち行って」
絵を隠してカンカンになって怒ると、「集中しても一緒だろ」と言われ、キッと睨みつけた。
「私、こう見えても最近すっごく調子が良くて絶好調なんだから!」
「へぇ。じゃあ見ててやるよ」
「えっ……?見っ……」
「ほら、やれよ。その絶好調とやらを見ててやるからさ」
片方だけ口角を上げた奴は再びクッと笑う。
「え……。いや……それは……ちょっと……」
この後、撃沈したのは言うまでもない。
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