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召喚
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何百年もの間、時間をただ消費していくだけの退屈な日々だった。
だけど……
これからは何かが変わるような気がする。
「俺がこのクラスの特別講師になってやるって言ってんだ。感謝しろ」
「特別……講師……?」
シエルは口をあんぐりさせた。
俺はシエルの肩にポンと手を置いたあと、踵を返した。
すると「待って」と引き止められる。
振り返ると、熊を大事そうに抱くシエルが映る。
「……んだよ」
「……その……」
シエルはグッと眉を寄せ、視線があっちにこっちに動いて落ち着きがない。
「言いたい事あるならさっさと言え」
いつもならこんなハッキリとしない態度を見せられるとイラつくだけなのに……イラつかない。
突然、大きな目が向いて視線が絡んだ。
その瞬間、自分の心臓が小さく跳ねたのが分かった。
「あ……ありがとう」
その瞬間、全身にむずがゆいような感覚が走った。
「……はぁ?」
別に俺は言わせてない。
なのに、誰かに嫌々言わされたようにも、照れているようにも感じる顔で感謝の言葉を述べたこいつの心境が理解出来ない。
でも、もっと理解出来ないのは……こいつの言葉を聞いた瞬間から、俺の心臓が煩くなった事だ。
胸の奥で響くこの感覚は、一体何なんなんだ。
だけど……
これからは何かが変わるような気がする。
「俺がこのクラスの特別講師になってやるって言ってんだ。感謝しろ」
「特別……講師……?」
シエルは口をあんぐりさせた。
俺はシエルの肩にポンと手を置いたあと、踵を返した。
すると「待って」と引き止められる。
振り返ると、熊を大事そうに抱くシエルが映る。
「……んだよ」
「……その……」
シエルはグッと眉を寄せ、視線があっちにこっちに動いて落ち着きがない。
「言いたい事あるならさっさと言え」
いつもならこんなハッキリとしない態度を見せられるとイラつくだけなのに……イラつかない。
突然、大きな目が向いて視線が絡んだ。
その瞬間、自分の心臓が小さく跳ねたのが分かった。
「あ……ありがとう」
その瞬間、全身にむずがゆいような感覚が走った。
「……はぁ?」
別に俺は言わせてない。
なのに、誰かに嫌々言わされたようにも、照れているようにも感じる顔で感謝の言葉を述べたこいつの心境が理解出来ない。
でも、もっと理解出来ないのは……こいつの言葉を聞いた瞬間から、俺の心臓が煩くなった事だ。
胸の奥で響くこの感覚は、一体何なんなんだ。
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