【講談社大賞受賞作品】私を殺したのは、大魔法使い様ですか?

花澄そう

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やっぱ、国の考える事は相変わらずサッパリだな。


でも長年の経験で分かってる。
国の命には逆らわないっ方がいいって。

山のようにある職の中で1番労働時間が短いこの職を選んだのに、とんだ誤算だ。

時を見てさっさと別の所に移るか。
久しぶりに国籍を変えて別の国に移住するのもいいかもしれないな。
どうせ俺のこの肩書があればどこに行っても必要以上に歓迎されるんだし。

とりあえず、出来るだけその返事は先延ばしにしておくか。
「考えさせてくれ」

そんな事を考えているとも知らず、俺の返事を聞いた教頭は深々と頭を下げてつむじを見せた。

「よろしくお願い致します!使!」
その瞬間イラっとした。

「おい」
「はい?」
頭を上げた教頭の口に指を向けてピシャリと言う。
「てめぇ……今なんて言った?」

「えっ、ありがとうございます、大……魔法……」
その瞬間、やっと気付いたのか、教頭がハッとした顔をして口に手を当てた。

みるみる青くなっていく教頭は震えそうな声で謝る。

「も……ももも申し訳ございません」
「今後一切、他の奴らがいる場所でその言葉を口にするな。次はないからな」
「しょ、承知致しました」
指を離すとほっと胸をなでおろす教頭。

「念のため確認する。俺が大魔法使いという事はお前の他に学園長しか知らない。合ってるか?」
「は、はい!!その通りでございます!
私と学園長のみ知る事でございます。でも……どうしてそこまでして隠されるんでしょうか?」


「その質問、答えなきゃいけねぇか?」
「い、いいえ。とんでもございません」

過去を勝手に調べられるのも知られるのも、人の気も知らない奴に面白半分に根掘り葉掘り聞いてくるのも鬱陶うっとうしい。

『全世界に数人しか持てない凄い肩書なんだから、もっと自慢して歩いてもいい位だ』と言われる事もあった。
でもそんな行動は、デメリットだらけだ。

この肩書をおおやけにすると、人はいくらでも寄ってくる。

何世代か前に、騙され利用され、散々な目にあった。
あの時以来、俺はこの肩書は公にしない方がいいと確信した。


あの時の事を――少しでも思い出すだけで未だに虫唾むしずが走る。

「胸くそ悪りぃな」

油でも飲んだかのようにムカムカしてくる胸元をグッとつかんでつぶやいた時――


「きゃぁぁぁぁーーーー!!!!」
と、廊下の窓の外から甲高かんだかい叫び声が俺の耳をさした。
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