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殺人鬼と呼ばれる子
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「あれは、誰がどう言おうと不可抗力なんだよ。君は悪くない!」
副看守は、濡れた手の平から目が逸らせない僕にそう言いながら、僕の背中に手を回して来る。
その瞬間、酷く驚いた。
だって、今まで感じたことの無い、心地いい温かさが僕の体を包み込んだから。
僕は物心着いてから初めて、人に抱きしめられていた。
副看守が温かいせいか、冷えて凍えてしまいそうな心が――ほんの少しだけ溶けていく感じがした。
いつの間にか総看守に纏っていた火は収まっていて、鉄格子の向こう側では看守達が総看守を治療しながらどこかに運び出している様子が映った。
なのに副看守は総看守に付き添う事なく、鎖に繋がれている僕を抱きしめ続けていた。
「こんな小さいのにね。かわいそうに……。物心つくより前にこんな酷いレッテル貼られて、本当に辛かったね……」
そう言う副看守は何故か泣いていた。
何に泣いているのか全く分からない僕は、とても不思議な気持ちでいた。
頭を撫でられ、酷く心地いいのに何故か胸が苦しくて……
詰まりそうな胸に息まで詰まるのかと思った。
そして急な眠気が襲ってきて――僕は副看守の腕の中で眠りについた。
…………
……
……寒い……。
目が覚めると、僕は冷たい床の上で横になっていた。
まだ頭がハッキリしないうちに、どこからか話し声が飛び込んでくる。
「あの子供、あの魔道具で魔力を制御出来なかったらしいぜ」
「知ってるよ。だから手枷が3重なんだろ。でも3重なら大丈夫って保証あるのかな。本当に大丈夫か!?」
「さぁ~?こんな事初めてらしいから、あれで大丈夫なのか誰も分からないらしいぜ」
その会話を聞いてから目の前にある自分の手元にピントを合わすと、3重の手枷が目に入った。
副看守は、濡れた手の平から目が逸らせない僕にそう言いながら、僕の背中に手を回して来る。
その瞬間、酷く驚いた。
だって、今まで感じたことの無い、心地いい温かさが僕の体を包み込んだから。
僕は物心着いてから初めて、人に抱きしめられていた。
副看守が温かいせいか、冷えて凍えてしまいそうな心が――ほんの少しだけ溶けていく感じがした。
いつの間にか総看守に纏っていた火は収まっていて、鉄格子の向こう側では看守達が総看守を治療しながらどこかに運び出している様子が映った。
なのに副看守は総看守に付き添う事なく、鎖に繋がれている僕を抱きしめ続けていた。
「こんな小さいのにね。かわいそうに……。物心つくより前にこんな酷いレッテル貼られて、本当に辛かったね……」
そう言う副看守は何故か泣いていた。
何に泣いているのか全く分からない僕は、とても不思議な気持ちでいた。
頭を撫でられ、酷く心地いいのに何故か胸が苦しくて……
詰まりそうな胸に息まで詰まるのかと思った。
そして急な眠気が襲ってきて――僕は副看守の腕の中で眠りについた。
…………
……
……寒い……。
目が覚めると、僕は冷たい床の上で横になっていた。
まだ頭がハッキリしないうちに、どこからか話し声が飛び込んでくる。
「あの子供、あの魔道具で魔力を制御出来なかったらしいぜ」
「知ってるよ。だから手枷が3重なんだろ。でも3重なら大丈夫って保証あるのかな。本当に大丈夫か!?」
「さぁ~?こんな事初めてらしいから、あれで大丈夫なのか誰も分からないらしいぜ」
その会話を聞いてから目の前にある自分の手元にピントを合わすと、3重の手枷が目に入った。
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