【講談社大賞受賞作品】私を殺したのは、大魔法使い様ですか?

花澄そう

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殺人鬼と呼ばれる子

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「ディオン……

カミヅキ・ディオン……」

その声に重い頭を上げると、首と両手両腕についている重い手枷てかせ足枷あしかせがジャラリと音を立てた。

「またお前か」
薄暗い鉄格子越しに鬱陶うっとうしそうな顔をするのは、この塔の総看守。

「まだ7歳なのに3回目の塔入りなんて、さすが生まれながらにしての殺人鬼だな」
「止めろ」
止めに入ったのは、口を歪める総看守の影にいた、バインダー片手の副看守。

「まだ子供なのに、もう少し優しくしてやれないのか?こんな所にこんな幼い子供が入って来ただけでもかわいそうなのに」

副看守の言葉に目を吊り上げた総看守は怒鳴るように言う。

「ハァ?かわいそう!?前もそんな馬鹿げた事をぬかしていたな!」
「馬鹿げだって?」
「この際だから言っておく!俺はこいつに心底恨みがあるんだよ!法に触れなければ今すぐにでも八つ裂きにしたい位にな!」

総看守が鉄格子を蹴り上げて、ガンという鉄の音が頭に響いた。


「おい、クソガキ」
そう言われて恐怖心を抱きながらも総看守に目をやる。

「魔法で友人と喧嘩けんかなんて、そんな小せぇ事でここに来るんじゃねぇよ!ちゃんと人でも殺してから来いよ!」
「総看守!何言ってんだ。正気か!?」
「煩い!副看守のくせに俺に指示すんな!そこで黙って見てろ!」

総看守は、副看守が掴んでいた腕を振りほどいて、鉄格子の中に入って来る。
その事に、お山座りをしていた足をグッ引き寄せた。

「総看守、まさか……何かするつもりじゃないだろうな!?」
慌てた様子の副看守の言葉に呆れたように返す総看守。

「んなわけねぇだろ。この階は体罰禁止だ。そんな事くらい分かってる。だからムカついてんだろ!!」

そう言いながら僕の目の前にしゃがみ込む総看守は、憎しみを込めた目で僕の顔を見下ろした。

「クソガキ、法に感謝するんだな」
そう言って立ち上がると、僕の顔につばを吐き捨てた。

「うっ」

「おい!酷い事するんじゃない!」
「何も知らねぇやつは口出しすんな!俺はこいつを一生許さねぇ!」
「……知ってるよ」
副看守の言葉に、総看守は目を大きくした。

「……へぇ。誰かに聞いたのか」
「そうだよ。この子に、その……お前の家族が殺されたんだよな」
「そうだよ。そこまで知っててどうして俺を止める」
「だって……あれはどう考えても不可抗力だろ。仕方なかったんだ」
「は?不可抗力だ?お前分かってねぇな」
「分かるよ!」

「いいや。お前は分かってない。……お前の嫁、今妊娠中だったよな」
「あ……ああ。それがなんだ」
たじろぎながら返す副看守はバインダーをギュっと持つ。

「もしもその嫁が、不可抗力で殺されたら……お前『不可抗力だから仕方ない』なんて言えんのか!?」

その言葉に副看守は、一瞬固まって眉をひそめると、分かりやすく目をらした。
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