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月夜

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仰向あおむけになった私の首元に、ゆっくりと手が伸びてくる。
また首を絞められると思って身構えると、その手はなぜか肩に触れた。

目の前の奴は、私の濡れた黒い髪をすくって薄く口を開ける。

「お前…………ほんとおかしいよな。
この俺に歯向かったり……死にたくねぇくせに強がったり……こんなあきれそうな魔力を隠していたり」

この俺って、どの俺よ!?
そして呆れそうな魔力とは?
私、そんな壊滅的にヤバいって事?言い方酷過ぎる。

「変な奴……」
変な奴検定があったら、明らかに私よりいい成績を収めるであろう目の前の奴は、ふと笑みをこぼした。

その瞬間、ドクンと心臓が跳ねた。

うっ…………わぁ……。


奴がこぼした笑みは、前世を含めて飛びぬけて美しく、思わず息の仕方を忘れた。


自分の心臓は、今まで味わった事がないほどに鷲掴わしづかみされたように苦しくなる。


目を離したいのに、滑稽こっけいな事に、私の瞳はちゃっかりとこの顔をしっかり脳に焼き付けていた。 

「お前みたいな奴、初めてだ」 

そうつぶやくと、すくったままの私の髪にキスを落とした。

その光景に、心臓が壊れるんじゃないかと思うくらいにドキドキする。
2度も私を殺そうとして来た相手なのに。本当にどうかしてると思った。


「……面白い」

面白い、とは?

ポイっと雑に手放された私の髪は、自分の胸の上にパサッと落ちる。

奴の目が怪しげにあおく輝くと、私の顔を挟むように両手をついてベッドをきしませた。


「俺はこの世の事ならなんでも知っている。なのに……」

奴は少し首を傾げる。
髪が揺れてむき出しになった首筋から色気が見えて、思わずもだえそうになる。

すると、その色気むき出しの奴が私の顔にその顔を近付けて来て……

「え……ちょ……っと」
キスされるのでは、と一瞬脳裏に走った予感は、私の顔の横を通り過ぎた事で消えた。
そして彼が私の首元に顔をうずめたと分かった瞬間から、再び体が硬直した。

「ひっ……」
「気持ち悪りぃ……」
え?私が!?
それとも体調が悪いとか!?
吐くなら他でお願いします!


「な、何してんのよ。さっきあんた何もしないって……」
首元で話されて首に息がふれる。
唇が触れて、くすぐったい。

なになに!?何が起きてんの!?
理解が全然追い付かないんだけど。

「お前が吐けば何もしないだった。この俺に分からねぇ事があるなんて気持ち悪りぃんだよ。だから今すぐ吐け」
「んっ……」
首筋と腹部にくすぐったい感覚が走る。


ん?腹部!?
その事に慌てて首を少し起こすと、自分のシャツのすそから彼の手が差し入っていく様子が映った。

「やっ……な、何して……っ」
そう話している間にシャツがめくり上がって、自分のお腹が見えてドキっとする。
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