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学園最弱の存在 Fクラス-16歳-
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しおりを挟むここは、高さで言うと5、6階くらいに相当すると思う。
斜面はかなり急で、万が一つまずいたりしたら転んで落ちて死んでしまう高さだと思う。
「なななな、なんで私が、ここ、こんな所に……っ」
叫びながらすぐ横にあった時計台の壁に抱きつくと、後ろからクスクスと笑う声が聞こえた。
「だせぇな。足ガタガタ震えてんじゃん。お前って、大口叩く割に実はビビリだよな」
落ちないように、しっかりと壁にしがみつきながら、声のする方をゆっくり振り返る。
すると、宙に浮く白銀男が歪んだ顔で微笑している様子が映り込んだ。
浮遊魔法は魔法使いの中でも一部の人しか出来ない。さらには自分を浮かすのはその中でも一握りだ。
瞬間移動に浮遊魔法、後は人を勝手に動かす能力があるなんて……一体この人は何者!?
「違うわよ!震えているのはっ……」
さっき手を上げられそうになったからで……と言いかけた私は、慌てて噤んだ。
危ない危ない。
弱みを、最も見せてはいけない相手に晒すところだった。
「そんな話はどーでもいいんだよ。それよりさっさと言えよ」
「だから、何も言う事なんて……」
「考えれば分かるだろうが。お礼だよ、お・れ・い」
そう言われてポカンと口が開いてしまう。
「は?お礼?……なんの?」
「さっき、この俺が、お前ごときを助けてやっただろうが」
と顎を上げて言う言葉に、さらに口が開いてしまう。
……もしかして、さっき打たれそうになった時の事?
この人、私の首絞めておいて、あれごときの事で恩を売りつけるなんて正気なの!?
自分勝手で、人の事なんてこれっぽっちも考えていなさそうなこいつを見ていると、また私を殺したあの黒髪の奴が脳裏に浮上して来る。髪色も髪型も正反対だけど。
そのせいで記憶に残る奴の声に似ている気がして来る。
嫌い。
……私を殺した奴みたいで、大っ嫌い!
この俺がって、何!?何様なの!?
「別に、あれくらい私一人で大丈夫だったし!それにあんたなんかに助けられたくなかった!」
「なんだ、その口の利き方は」
酷く低い声が落ちて来て、しまった!という文字が頭に浮かび上がった。
こんな斜面の上に連れて来られて、2人きりの状況なのに、感情的に言いすぎたことに今さら気付いた。でも、それはもう後の祭りだろう。
奴は、ポケットに手を突っ込みながら音もなく私の前に降り立つ。
風がサラリと前髪を揺らすと、静かに首を傾げて私を覗き込んだ。
その瞬間、分かった。
雰囲気だけじゃなく空気までも一変したと。
「死にてぇのか」
冷酷さを感じる鋭い目に覗き込まれて、冷や汗がどっと噴き出た。
……怖い。
こいつと今すぐにでも距離をあけたいという気持ちとは裏腹に、こんな危険な斜面のせいで一歩も引けない。しかも奴の方が高い位置だし。
「なら、殺してやる」
「えっ……。私、死にたいなんて思ってな……」
奴は、私が話している最中に手を向けて来たと思うと、私の肩をトンと押した。
その瞬間から私の視界は、奴からゆっくりと空に上がって行く。
「え……」
驚く私の声と重なって、「どーでもいい」と言う彼の声が聞こえた。
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