【講談社大賞受賞作品】私を殺したのは、大魔法使い様ですか?

花澄そう

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Fクラス-14歳-

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こういう事を言われるのは時々ある。
ある程度慣れてはいるけど、やっぱり傷つかない事は難しい。


サオトメさんに聞こえていないのが救いなのかもしれない……
と思っていると、次々と痛い程の視線が刺さってくる。

やっぱり気のせいなんかじゃなかった。
上級クラス棟の近くをサオトメさんと二人で歩いているせいで、めちゃくちゃ目立っているようだ。

メイが居たらこんな事にならなかったんだろうな。
メイがいないと分かった時点で断ればよかったかも。


そんな小さな後悔にため息をついて彼の横顔を見る。


はぁー。
でも、モテるよね。

本当に綺麗な横顔。

長いまつ毛。すっと通った鼻筋。
中性的な顔なのに、少し大人っぽくも見えるのは背が高いからなのかな?

前世も含めて恋愛なんて興味なくここまで来てたけど、この人に関しては、恋愛する人たちの気持ちが少し分かる気がする。

「そんなに見ないでくれる?照れるから」
そう言われて初めてガン見してた事に気付いてパッと前を向いた。

危ない危ない。
上級クラス棟からは離れたけど、まだ誰かが見てるかもしれないのに。


「ご、ごめんなさい!」
「いや、別にいいんだけど……」
「勝手に手を掴んだ上に、必要以上に見られて……気持ち悪いですよね。本当にごめんなさい」
「いや……」
「でも綺麗だったから……つい……。もう見ないのでご安心を!」
そう言って彼側に手で日差しを作ると、フッと笑い声が聞こえた。


「何言ってるの。綺麗なのは君の方なのに」


そう言われて勝手に足が止まった。
一瞬聞き間違いだと思って、再び頭の中で何度かその言葉を繰り返し再生するけど、聞き間違いでは無かったようだ。


……さっきから変に意識しっぱなしなのに、そんな事言われると、どんな顔をしていいのか分からない。


自分は今、どんな顔をして言ってるんだろうか。
困ってるのか、照れてるのか、それとも……。



「私……じょ、冗談は苦手です」

チラリと彼を見ると、突然この渡り廊下にぶわっと風が吹いた。
私と彼の間に桜の花びらが紙吹雪のように流れていく。

すると、彼のエアリーでふわふわの髪が揺れて、綺麗な瞳が緩んだ。

「僕も。……冗談は苦手です」

サオトメさんから少し照れた表情がうかがえて、訳が分からなくなる。




…………

……

前もって用意してきた懐中電灯で前を照らす先には、『魔書資料室』と書かれたプレートのあるドア。

「い、いきなり……見つけてしまった……」
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